2026年7月6日、一般社団法人日本関係人口協会が主催するオンラインセミナー「指出一正著『オン・ザ・ロード2』から紐解く『最強キーワード7』」の第4回に、ADDress代表の佐別当隆志が登壇しました。
テーマは「二拠点思考」。『ソトコト』編集長で同協会代表理事の指出一正さんとのクロストークを交えながら、二拠点・多拠点で暮らすことが人の生き方や地域にどんな変化をもたらすのかを語り合いました。平日の月曜夜にもかかわらず、140名を超える申し込みがあった当日の様子を、ダイジェストでお届けします。
「二拠点思考」とは、新しい自分に出会える考え方

セミナー冒頭、佐別当は「二拠点思考」を自分なりにこう定義しました。
佐別当自身、「働く場所がどこでもいいなら、好きなときに好きな場所で好きな暮らしができる社会にしたい」という思いからADDressを立ち上げ、現在は札幌をベースに各地を巡る生活を送っています。
二拠点・多拠点居住が生き方の可能性を広げる

続いて、二拠点・多拠点居住のメリットについて。「日本一周したい」「自然豊かな場所に行きたい」といった観光的なメリットだけではなく、「普段自分が住んでいる場所を変えること自体が、自分の生活の伸びしろを広げていく」と佐別当は語ります。
もともとIT業界で「人間らしくない生活」をしていたという佐別当が、40代になって「人間らしい暮らし方をどんどん取り戻していった」というエピソードには、指出さんも深くうなずきます。一方で、「田舎暮らしはしんどくて無理だった、と気づく人もいる。それはそれで、都会ベースの暮らしが自分に合っていると分かる新しい発見」だとも。
地域側の視点——「一見さん」ではなく、顔の見える関係を

訪れる側のメリットだけでなく、「地域側の観点」で考えることも大切です。観光では、ともすればおろそかになりがちな視点です。
さらに、そうした来訪者の存在は、迎える側の意識も変えていくといいます。
地域側にとっての関係人口——鍵を握る「家守(やもり)」

ADDressが創業以来もっとも大切にしてきたのが、各拠点で物件の管理と地域との交流を担う「家守」の存在です。
クロストークでは、指出さんが提唱してきた「関係案内人」「関係案内所」という言葉との共鳴も話題に。佐別当は「家守の仕組みを考えているとき、まさに関係案内人の記事を読んで『これだ』と思った」と明かしました。
最近では家守への応募がここ数年で1,000人以上あり、ADDress会員から家守になるケースも数十人規模で生まれています。
指出さんはこれを受けて、「中間支援的な立場の人がいることで、動かなかった関係性が動き出す。そのような人をどう育てていくか、どう価値をつけていくかを考えることが大事」「家守という仕組みは一つの『正解のありよう』だと思う」とコメントしました。
なぜ札幌と三島?——「自分をさらけ出せる場所」を複数持つ
クロストークで指出さんがまず尋ねたのは、佐別当自身の二拠点生活について。札幌に生活のベースを移した後、静岡県三島市にも約1年半、シェアで部屋を借りていた理由をこう語ります。
「それぞれの地域にいるときの心持ちは違うんですか?」という指出さんの問いには、
と答えました。
「知るということは、背負うこと」
印象的だったのは、「好きな地域の名前がニュースに出てくると見過ごせなくなる」という佐別当の話に、指出さんが登山家・野口健さんから教わったという言葉を重ねた場面です。
指出さんは「二拠点思考」という言葉に込めた思いについて、「実際の居住だけでなく、頭の中に自分のふるさとのように親しみのある場所をプロットしておくと、生きやすくなる、暮らしやすくなる、自分自身の成長にもつながる」と説明。「きっと二つでは収まらない。僕たちは知らず知らずのうちに多拠点で生きているんじゃないか」という言葉に、佐別当も大きく共感しました。
参加者からの質問より
チャットには多くの質問が寄せられました。一部をご紹介します。
Q. 車の運転をしないので、地方では二次交通に苦労します。家守さんは送迎などもしてくれるのでしょうか?
「場所と人によります、というのが正直な答えですが——例えば福井県鯖江には、第二の人生を家守として楽しんでいる元教師の家守さんがいて、時間が合えば駅から車で送ってくれたり、実費精算で歴史や文化、おいしいお店を車で案内してくれたりします。全員が全員ではないですが、そこまで楽しんでやってくれている家守さんもいます。」(佐別当)
Q. 子育て中で、憧れはあるけれどなかなかADDressを使うモードになれません。何がきっかけになるでしょうか?
「中学生のお子さんがいるお母さんが使っている事例は何度か聞いています。月に1回、平日にお母さんがADDressで気分転換をするようになったら、家族が自分たちでご飯を作れるようになった、と。「自分がいなきゃ回らない」と思うと出られないけれど、家族にある程度自分たちで何とかすることを覚えてもらい、自分自身も一人の人間として大事な時間を作る。その後、お子さんが「行ってみたい」と言って親子で利用されたケースもあります。」(佐別当)
指出さんも、神戸と東京の二拠点生活の中で「生活がスプリットすることで、妻は自分のやりたいこと(機織り)の時間を持てるようになり、僕は家で自炊をするようになった。分散することで、実はお互い自分の時間を得やすくなる」という実体験を紹介しました。
関係人口とは「自分をさらけ出せる場所があること」
セミナー恒例の共通質問として、最後に3つの問いが佐別当に投げかけられました。
——佐別当さんにとって、関係人口とは?
「自分の住んでいる場所ではないところに、自分をさらけ出せる場所があるということ。それが関係人口の一つの証明じゃないかなと思っています。」(佐別当)
——今、地域や社会に関係人口が必要だと思う理由は?
「人の流れは、止まってしまうと死んでしまう。人間の血液と同じだと思うんです。人口が減少している中では、地域の可能性や未来は関係人口が作り出す。地域に関係人口が増えると、地域の未来が開かれていくんじゃないかなと思っています。」(佐別当)
——関係人口が広がった先の、未来のイメージは?
「各地域に友達がいる状態が増えていくと、めちゃめちゃ楽しいんですよ。どこかに行こうと思ったとき、住んでいる場所の友達と行くんじゃなくて、『9月に琴平に行くから、彼と彼と彼を誘ってみよう』『住んでいるのはバラバラで、琴平集合』みたいな感覚。いろんな地域にいろんな仲間たちがいるというのは、個人の幸福度を、可能性も含めてすごく広げるんじゃないかなと思っています。」(佐別当)
指出さんは「地域に拠点を持つことは、必ずしもリジッドなものじゃなくていい。友達がそこにいる、知っている話題の中に入っていける——二拠点思考は、地域に仲間が増えていくと本当に楽しいものになる」と締めくくりました。