※こちらの記事は『「分散する生き方の魅力と多拠点ライフの可能性」|シェアリングエコノミー協会 代表理事 石山アンジュさん × 株式会社アドレス代表取締役社長 佐別当隆志』のイベントレポートです。
今回登壇いただいたのは、ご自身も東京と大分の「多拠点ライフ」を実践されている石山アンジュさんと、 月の半分はADDressを利用しているという弊社代表取締役社長の佐別当隆志さんです。
アンジュさんは20代後半から、佐別当さんは30代から多拠点生活をはじめたといいます。そんなお二人に、ご自身の多拠点ライフでの経験や、住まいのみならず、仕事やコミュニティも分散するという新しい価値観についてお話いただきました。
目次
登壇者紹介
私たちの多拠点ライフのはじまり
アンジュさん▶︎
私が20代の頃は、まだまだ「シェアハウス」という存在は少なく、社会人3年目くらいの頃から、Airbnbなどのサービスが台頭しはじめたと思います。
それまでは「旅行」といえばホテルを使っていましたが、私もこの時期から民泊を活用するようになりました。
当時のAirbnbは家主居住型がメインで、空いている子供部屋をゲスト用にする、など本当に家族の一員のような雰囲気で滞在することができました。
さまざまな国に行って、ホストとFacebookで友達になって、泊まれば泊まるほどFacebookで友達が増えていく感覚だったのを覚えています。
当時は多拠点生活という言葉はありませんでしたが、もしかしたらこういった経験が私の「多拠点生活」のはじまりだったかもしれません。
佐別当さん▶︎
私は、2010年にソーシャルアパートメント恵比寿に入居したのがはじまりです。
大人になってから、職種も年齢も違う、いろんな人たちと出会うっていいなと感じましたし、これからこういう社会になっていくんだと実感しました。
その後、2013年からシェアハウスをはじめ、ずっと一緒に暮らす家族もいれば、Airbnbも併設して数週間だけ一緒に暮らす人もいる、といったシェアライフ的な生活を実践しました。
そのうち、受け入れるだけではなく、自分たちも多拠点生活をしたいと思いはじめ、2019年からADDressを始め、多拠点生活が始まりました。
アンジュさん▶︎
佐別当さんお子さんは、ホームスクーリングとのことですが、Airbnbで世界各国の方が宿泊されるので、学校似通わなくても、いろんな言語話せたり、多様な価値観で育ってますよね。
佐別当さん▶︎
本当にそうですね。今も台湾に一人で行ってますよ。(笑)
やっぱり家族だけで暮らしたり、一人暮らしの時は、毎日の暮らしが閉鎖的で、学びや出会いがあるわけではなかったんです。
でも、シェアハウスや多拠点生活をはじめてからは、掃除したり、ご飯を食べるといったたわいもない時間が、すべて刺激的で、色々な価値観に触れられる体験になるんですよね。
コロナで変わった暮らし方、増えつつある働き方の選択肢。小さなものに複数所属することがステータスの時代へ
司会▶︎多拠点生活も長いお二人ですが、改めてなぜ今、この時代に多拠点生活なのか、ということについて教えていただけますか。
アンジュさん▶︎
1つ目が、コロナで「暮らし方を見つめ直す機会が増えたこと」だと思います。
リモートワークが増え、どこで働いてもいいという選択肢を持てる人が多くなりました。
引用:「多拠点ライフ」
これまでは、基本的に住む家は1つで、会社の近くに住み、家族と一緒か一人で暮らし、家は買うか賃貸という選択肢しかありませんでした。
複数の家を持つには2倍の家賃がかかり、そのためお金持ちだけができるものだと思われていました。
ですが、ADDressをはじめ、その他の多拠点サービスの普及によって、月額数千円から、誰でも全国に拠点を持てる暮らし方や生き方ができるようになりました。
一緒に住む人も、家族だけでなく、趣味を通じて、コミュニティを通じてなどの色々な選択肢が増えています。
2つ目が「働き方の変化」です。
これまでは、1つの会社に勤めて、同じ同僚と毎日顔を合わせ、同じオフィスに出社するというのが基本でした。
一方現在では、副業が認められたり、シェアサービスが増えたことによって、複数の個人とやり取りできる選択肢が格段に広がってきています。
報酬もお金だけではなく、つながりや、地域通貨、可視化されない贈与の関係など、多様なものが考えられます。
引用:「多拠点ライフ」
また、世の中の様子も大きく変わりました。
いつ戦争や災害が起こってもおかしくない、何が起こるかわからない社会の中では、従来のように何かを所有して増やしていったり、キャリアを積み上げていくことは安心にはつながりません。
そうではなく、複数の選択肢を持っておくことの方が安心につながっていくと感じています。
例えば、東京で地震があっても、福岡に家がある。A社が倒産してもB社がある、そんな風に分散することが安心につながり、小さなものに複数所属していることがステータスになっていくと考えています。
佐別当さん▶︎
おっしゃる通りで、例えば住まいにしても、震災やご近所トラブルといったいざという時に「おいでよ」って言ってくれる友人がいるかどうかが、普段の安心にも繋がってくると思います。
そしてそれは住まいだけではなく、仕事も、金融資産も、コミュニティも同じだと考えます。分散しておく方が、緊急時におけるリスクだけではなく、出会いの可能性が広がっていくとも感じています。
僕は最近、繋がりを通して、山登りや畑なども初めてみたのですが、やってみると自分の作る作物で料理するのって最高だな、と気づいたんです。
まさに「お金で買えない豊かさ」だと感じました。
制限があっても、多拠点ライフは楽しめる
司会▶︎多拠点生活に憧れつつも、まだ一歩踏み出せない、という方も多いと思います。お二人の経験以外でも、こんな方が多拠点生活を楽しんでいる、という事例があれば是非教えてください。
佐別当さん▶︎
ADDressを利用いただいている方の中で印象に残っているのが、半身付随の50代の方です。なんとその方は、月に20日以上はADDressを使っておられると言うことでした。
農業をされている方で、土の違いなどから、何箇所かで農業をやりたいということでADDressを利用し始めたそうです。
ADDressの会員さんはサポートしてくれるとのことで「1回障害を持つと、健常者との関わりがすごく減ってしまう。だけど、ADDressは生活しているだけでいろんな人と話せる」という言葉はうれしかったですね。
アンジュさん▶︎
私は、家族連れで全国バンライフをした方にインタビューをしたことが印象に残っています。
そのご家族は現在「デュアルスクール」という、2つの学校に籍をおける制度を自治体に打診して、2拠点生活を送っておられるとのことです。
家族、特にお子さんがいるとどうしても多拠点って難しいと思われがちですが、こんなやり方もあるんだと新しい発見でしたね。
さいごに
佐別当さん▶︎
僕はADDressをはじめて、大人になってから友達ができたり、新しく趣味ができるということを体験しました。
住む場所や働く場所を変えることは、人生を変えるチャンスだと思います。
アンジュさん▶︎
私は多拠点ライフをやっていく人たちと一緒に、この社会を変えていきたいと思っています。
一人一人が多拠点ライフをすることで、面白い地域が増えていき、一極集中している人口が分散されていけば、サステナブルな社会ができていくのではないでしょうか。
石山アンジュさん新著『多拠点ライフ』のご紹介
終わらない戦争、自然災害、感染症、など何が起こるかわからない時代の中で、働き方だけでなく暮らし方、ライフスタイルそのものを見直す人が急増している。その中で、「いくつもの選択肢をもつこと」はこれからの社会の豊かさのスタンダードになる。
日本のシェアリングエコノミーの第一人者であり、自身も多拠点生活を実践している著者が、多拠点ライフで変わる、新しい社会と生き方、今から始められる実践方法を提示する一冊。
多拠点ライフ-分散する生き方-