暮らしの新しいスタンダード「多拠点生活」の魅力とはじめ方

※こちらの記事は、面白法人カヤック主催(共催:一般社団法人シェアリングエコノミー協会、株式会社アドレス、MoonBase株式会社)の『暮らしの新スタンダードを考えるセミナー 〜石山アンジュ著『多拠点ライフ』刊行記念イベント』のイベントレポートです。

第一部 セッション 登壇者紹介

コロナを経た世の中の価値観の変化、また「暮らしをシフトするときの足かせ」などについてお話します。

コロナによって変わった仕事と暮らし、そして価値観

▶︎アンジュさん

コロナによって、世の中にはさまざまな変化があったと思います。その中でも、「価値観の変化」というのは大きいですね。

これまでは成長することを前提に、無限にある地球の資源を使って大量生産・大量消費をしながら、経済を成長させてきました。一生懸命働いて、マイホームやマイカーを買うことが、ある種、豊かさのステータスだったと思います。

ただし、それを獲得するためには競争や成長といった利己的な動機やモチベーションを源泉にしており、最大の報酬というのはお金だったと思います。

コロナ以降の今の社会というのは、リスクと共存する前提に立たなければいけない時代に入りました。

明日、首都直下型地震が起こるかもしれない、また新しい感染症が来るかもしれない、何が起こるかわからないということが常に隣り合わせだと気づいた社会です。

有限な資源の中で、付加価値を生み出していかなきゃいけない、そういったた中では、モノを新しく揃えるよりも、分け合ったり、共有したりすることがむしろお得みたいな側面もあり、豊かだという価値観が少しずつ支持されているのではないかと思います。

暮らしをシフトする際の足かせと対処法

▶︎中島さん

石山さんはご自身も大分と東京の2拠点生活をされていますが、一方で、多拠点生活と聞くと、「お金のある人しかできないんじゃないですか」といった疑問もあると思いますがいかがでしょうか。

▶︎アンジュさん

これまでは複数の家を持つと2倍で家賃がかかりましたが、今日のパネラー企業の1つ、アドレスさんなどは月1万円以下から、複数の地域に暮らすような体験ができるんですね。

こういったサービスが出てきていたり、自分がいない時は家を民泊で収入源にする、といった選択肢も出てきました。家賃が増えるどころか、むしろ収入にする発想や、プラマイゼロにしながら 複数の選択肢を持つということができるようになってると思います。

※石山さんの2拠点生活、新しい暮らし方・生き方についてはADDress会員インタビュー記事もご参照ください。

第二部 パネルディスカッション 登壇者紹介

地域に関する各サービスのキーパーソンが登壇。石山アンジュさんの書籍『多拠点ライフ』に出てくるキーワードについて、それぞれの視点で深掘りしました。

【パネリスト】

一般社団法人シェアリングエコノミー協会 代表理事 石山アンジュ氏

株式会社アドレス(ADDress) 保延祐希氏

MoonBase株式会社(Co-Sato)小菅勇太郎氏

面白法人カヤック SMOUTプロデューサー 宮本早織

【進行】

面白法人カヤック 執行役員 兼 ちいき資本主義事業部部長 中島みき

キーパーソンが注目する「多拠点ライフ」のキーワード

▶︎保延さん

僕は多拠点ライフは好きですが、居心地が良くない部分もあるんです。だけど、それでも多拠点ライフを続ける理由は、違和感を自分の生活の中に取り入れたいからです。

日々の暮しというのは、どんどん自分に最適に、過ごしやすいようになっていきますよね。もちろんそれは、快適で全く不便はないのですが、一方でそうなってしまうと物事の捉え方が固定化してしまう部分もあると思うんです。

多拠点生活をしていると、家に入った瞬間「自分だったらこんな家具の置き方しないな」といった風に、いきなりエラーから入っていったりするんです。

もちろん最初はストレスを感じることもありますが、だからこそ違う枠組みから物事を見れるようになったり、刺激をもらえることもあります。

これらの体験は、自分が全くコントロールできない場所で、全く違う人が集まって、利害関係なしでフラットに話せる場だからこそできると思いますね。

▶︎小菅さん

私は、高校生の時に興味本位で自分の友達に「将来どこに住みたいの?」といったことがあるんです。

自分は幼少期から、国内外問わず、瀬戸の離島や、ジャングルの中、ドバイや東京のような大都市まで、本当に様々な環境で暮らしてきていたこともあって、住む場所というのは、「自分で選ぶ」という感覚があったんです。

ですが、高校の友達に聞いた時には、みんなから「どこで暮らすかなんて考えたこともなかった」といった声や、「東京で暮らすという、それだけが選択だと思っていた」という声が上がったんです。

その時すごく衝撃を受けました。

確かにその当時は、「地方の暮しに憧れがあるけど、仕事の条件で見たらやっぱり東京に住みたい」などトレードオフでどちらかを選ぶ2択だったと思うんです。

ですが、今は多拠点生活のような様々な生き方の選択肢が広がって、1つの地域だけでは満たせない「自分の理想の生き方」というのを、複数の地域、複数のコミュニティにまがることによって実現できるんですよね。

これはまさに、いくつもの人生を自分で歩めるということで、本当に多拠点ライフの良さですよね。

▶︎宮本さん

今までは、「自立がいい」と思われてきましたよね。「自分の力で生きること=成功の証」みたいな感じだったと思うんです。

ですが、この「共立」、つまり「みんなで立つ」という言葉には、みんなで協力し合いながらやってもいいじゃんっていう意味が込められているようで、すごく励みになる言葉だと思いました。

▶︎アンジュさん

これはあえて「共存」ではなく「共立」という言葉にしたんですよね。やっぱり依存し合うのとは違って、お互い半分は自立している気持ちを持ちながら、それをシェアしていくような感覚です。

ですが、ぶっちゃけ、これって難しいんですよね。

日本人の特性なのかもしれませんが、頼ることが苦手という方も多いですよね。頼ることがもはやストレスになる状況の人もいるのかもしれません。

▶︎保延

そうですよね。ADDressって共同生活なので、日々の暮らしが全部基本的にシェアされていくんです。なので、ある意味そういったみなさんの「練習」にもなると思っていて。

共同生活の中では、強制的にお互いが協力し合わないといけない状況に対峙するんですね。

だからこそ、協力したり、頼り合うことの練習やリハビリにはぴったりだと思います。

一歩踏み出す!ワンポイントアドバイス

▶︎小菅さん

私はもともと海派の人間なのに、今は辰野という、内陸県のど真ん中にいるんです。この地域と出会ったのも本当に偶然です。でも、今では辰野の地域が自分にとってすごく大事な居場所になっています。

「多拠点生活」と聞くと、憧れの場所に住むイメージがあるかもしれませんが、結局は巡り合いで決まる部分って多いのかなと思っています。

▶︎保延さん

アドレスの会員さんに、多拠点生活を悩んでる人にかける声を聞くと、「えいや!っていうノリではじめて、合わなければ辞めればいいんだよ」というものなんですね。

まずは1回、試しにやってみるのでいいと思うんです。そしてその時の感覚を大事にして、いいなと思えば続けていけばいいんじゃないかと思います。

▶︎宮本さん

私の場合、保延さんとすごく真逆の内容なのですが。笑

やっぱり下準備が大事だなと思うんですよね。SMOUTの利用者さんを見ていると、地域に関わる前に、「自分が今までどう生きてきたのか」「何が好きで、何が嫌いか」「これから何がしたいか」、というのを洗い出し、言語化した人はうまくいっているなと感じます。

▶︎石山さん

「散歩する」ですね。

例えば、ただ旅行に行って旅館で1泊2日だったとしても、そこで散歩している中で。「もしここに仮に住んだとしたらどういう日常なんだろう」と考えてみるんですね。

そうなると、スーパーがここあるのか、意外と若い人がいるんだなとか見えてくるものがあると思うんです。

人間って頭だけじゃなくて、感覚的に「ここ合うかも」みたいなことって結構あるような気がして。

そういう意味で、旅先でなくとも、自分の住んでる隣の駅を散歩してみるとか、そういう散歩をおすすめしたいですね。

この記事を書いた人

三上ゆき

一般社団法人READYBOXで副代表をしながら、ライターやフリースクールの先生もしています。 「いいことを、淡々と」がモットー。