ADDressの特徴は均質化されていない滞在体験。観光だけではなく、家守やその土地にいる方々、同じようにさすらう会員同士の偶然の出会いから始まる交流の楽しさ。
家々の個性や偶然性を楽しむことこそが、このADDressのサービスを満喫するコツです。
ADDressのサービスに欠かせない、家守(やもり)の存在。単なる「管理人さん」ではなく、会員との交流を自ら楽しんだり、地元に密着したナマの情報を教えてくれたりします。
今回ご紹介するのは小田原D邸の足立さん。どんな方かワクワクしながら、小田原D邸のある鴨宮を訪れました。
小田原D邸。趣のある庭と日本家屋
鴨宮駅は東海道で東京から75分。小田原の隣駅。
東海道線沿いには藤沢、茅ヶ崎、小田原とホッピングに便利なADDressの家があります。
小田原D邸は駅から徒歩8分。家から2分程度でスーパーマーケットもあり、
自炊の食材調達にも困りません。
先代がお花の先生であったという小田原D邸。
木彫りの門扉を開くと、玉石が置かれ趣向が凝らされた庭が広がります。
お庭に面した廊下には眺められるようにソファが置かれ、四季折々の木々を鑑賞することができます。
到着した夕方、玄関を入ると家守の足立さんの快活な声が。
「夕食はまだこれから?サラダもあるよ。
スーパーすぐそこにあって、今日くる会員さんもちょうど買いに行ってるから」
ちょっと気圧されましたが、夕食は一人より複数いたほうが楽しい。
いそいそと買い物に出かけました。
戻ると、足立さんと会員のユミコさんが既に食卓を囲んでいました。
サラダに冷奴、枝豆、さつま揚げ、ピクルス。お酒好きにとってはたまらない。
そして何よりの酒の肴は、初めて会った者同士の雑談。
実は取材を事前に申し込んではいなかったのですが、出会った足立さんが気さくで魅力的で、思わずその場で「ADDressのライターなんですけど、お話聞かせて記事にさせてもらってもよいですか?」と申し出てご快諾いただき、インタビューさせていただくことになりました。食卓を囲みながら、早速足立さんにお伺いしました。
家をそのまま残して活用したいから、家守を始めた
ーーー足立さんはなぜ家守を始めたんですか?
この家をそのまま残しておきたいと思ったんです。私の実家でね。
両親が他界して、建て直す選択肢もあったけど、私はここをそのまま活用する道がないか考えていました。
そこで出会ったのがADDressです。
足踏みミシンや大きなスピーカーなど、当時の家具でそのまま設置しているものもあります。庭はまだまだこれから手入れして、ライトアップもしていきたいと思っているんですよ。
実際に家守を始めて、ウチの奥さん、家事やっていて大変だったんだなぁ、って思いましたよ。リネンの洗濯ね。3部屋あるんですが、一斉に退室が出ると全部のリネンを洗って乾燥させないといけない。シーツに掛布団カバーに枕カバーが4セット。結構な量なんですよ。
朝起きてまず天気予報を見るようになりましたね。今日は外に干せるかな、と。
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家守はコンシェルジュでもサーヴァントでもありません。
会員は賃貸契約で結んでいるから、滞在した部屋を清掃し、退室するのが前提になっています。
ルールを守ってもらうことが家守も会員も、お互いに快適な滞在をする秘訣。
その上で、家守や会員同士の出会い・交流を楽しむのがADDressの楽しみ方。
夕食は、基本は各自で自由ですが時間があえば誘い合って一緒に楽しむこともあります。
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会員にもいろいろな考え方の人がいるでしょ。
この人大丈夫そうだな、と思ったらお誘いしたり声を掛けるようにしてます笑。
中にはまぁ仕事だとは思うんだけど、ずっと部屋に籠って出てこなくて、
顔を合わせることなくいつの間にか退去していると、ちょっと寂しいなと思いますね。
あ、かじきの醤油漬け食べる?美味しいのあるよ。ガーリックトーストも焼くからね。
梅酒飲む?うちで漬けたの。美味しいよ。
(と、お話しながら新しいおつまみを手際よく準備してくれる足立さん。家守になる前のこともお聞きしてみました)
ADDressに思うこと
外資系の化学メーカーにいましたね。ベルギーにはよく出張で行きました。今も会社には行っていますよ。
ADDressは、今家の数を増やしていて急成長しているよね。サービスも急ピッチで改善しているしね。ただまだまだ追い付いていないところはあるんじゃないかな。
会員でも自分の家があって、ときどきADDressを別荘のように利用すると長く続くかもしれないけどね、ADDressだけで家をもたずに生活する、というのは何年も長続きはしないんじゃないかと思います。若いうちはいいかもしれないけど。
そうなったときに5年後、10年後、ADDressはどういう姿になるか。
代表の考えも聞いてみたいけどね。
家守も、兼業の人が多いんですよ。
だから負担が膨らまないようにね、例えば会員に最初に滞在のルールを説明するとか、
きちんと伝えることは大事だよね。
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足立さん。最初の印象は「会うとピリッと背筋が伸びそうな、近所のおじさん」
歯に衣着せずにズケズケ言うので一瞬ひるむが、人情があって面倒見がよい人。
ちゃんと挨拶しなかったり、筋が通っていないと怒られ(そうな気がする)
けれど話好きで、何かと気にかけてくれる。きっと、愛情が深いからこそ、心配したり、言いにくいことも言ってくれたりするのでしょう。
最近、そういうおじさんが少なくなった気がします。
ADDressのサービスについても「こうしたらいい」「ここに留意したほうがよい」
何年先のことも考えて意見を持っていて、熱く語ってくれます。テーブルに次々に出てくるおつまみをいただきながら、ほとんど材料費だけのような特別価格でお支払いをして、ありがたくご馳走になりました。
一緒に夕食を囲んでいた会員のユミコさん。
どのくらいADDressの家を回っているのかと思い、聞いてみました。
ーーーユミコさんはどのくらい家を回っているんですか?
週末に1泊づつ色々な家を回っているんです。実は家守になりたくて。
ーーー家守をやりたいと思って巡っているんですね。
はい。家守をやりたいといったら、ある家の家守の方に
「色々な家を回って家守に会ってみたら?」と言われたんです。
3カ月で20くらいは回ったと思います。
本当にいろいろな個性の家守がいて、自分がやりたい姿も少し見えてきた気がします。
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確かに、会員として家々を巡る立場もあれば、家守として回遊する会員を迎える立場もあります。
どちらも交流という意味では楽しそう。
私もいくつかADDressの家を訪ねる中で、「家守をやりたい」という会員に会ったのは初めてではありません。
足立さんの言うように、ADDressの多拠点生活で色々見た後は、気に入った家や土地で家守として多拠点生活者を迎える、という形もあるのかもしれません。
小田原D邸を発つ日、足立さんは早朝から外出されていました。
ダイニングテーブルには足立さんからの手書きのメッセージが。
「またお会いできるのを楽しみにしております。」と。
手書きで「また滞在しに来ます!」とお返事を書いて、置いてきました。
昭和レトロな、主に愛されて大切に手入れされてきた家。
足立さんが「このまま残したい」と言われた理由を、少し感じることができました。