「丘の上の森の図書館」で心がほどける体験を【ADDress家守インタビュー】鎌倉B邸 きょんさん

こんにちは。ADDressライターのノリコです。
会員歴は1年。家族4人で都内在住。ときどき家族を残してフラッと家出をして
ADDressの家での滞在を楽しんでいます。

ADDressの特徴は均質化されていない滞在体験。
観光だけではなく、家守やその土地にいる方々、同じようにさすらう会員同士の偶然の出会いから始まる交流の楽しさ。
家々の個性や偶然性を楽しむことこそが、このADDressのサービスを満喫するコツです。

家の個性を形にする、家守の存在。
どんな家守に会えるかドキドキしたり、会員からの情報を聞きながらワクワクして家を尋ねます。

今回ご紹介するのは鎌倉B邸の家守、きょんさんです。
10名近く滞在する、住人の多い鎌倉B邸をどう切り盛りしているのか。
そのあたりを伺ってみたいと思いました。

※きょんさんは家守を退任しており、鎌倉B邸は家守を交代して運営しています。

ADDress 鎌倉B邸

北鎌倉は東京からJRで47分。鎌倉B邸はJR北鎌倉駅から徒歩3分。
臨済宗の禅寺である建長寺、円覚寺を始め、紫陽花で有名な明月院や縁切寺と言われる東慶寺など、お寺巡りでも数日間は必要なほど、見どころが沢山の街です。
この家はかつて著名な東洋・考古学者の先生の自邸。リフォームも当時の古材を利用しています。
「丘の上の森の図書館」というコンセプトで随所に本棚があり、ADDress平井邸の家守であるブックコーディネーターの方の選書のコーナーもあります。

気になった本を手にとって共有スペースのロッキングチェアでゆっくり読書するなど、静かな時間が過ごせます。

ADDress 鎌倉B邸 部屋

本棚の木材を再利用して作られた広いダイニングテーブルで、家守のきょんさんにお話を伺いました。

家守を始めたきっかけ

ーーーまずは家守を始めたきっかけについて聞かせてください

2020年5月から家守をやっています。社会人になってからずっと逗子のシェアハウスに住んでいて、近くにADDressの逗子邸ができ、ときどき遊びに行っていたんですよね。
その後、ADDressの鎌倉B邸ができたのを知り、家守を募集していると知って興味を持ちました。
鎌倉B邸は広くて受け入れ人数も多いため、家守も複数いたほうがよいということもあり、最初はサブ家守として住みはじめました。

自分で家具・家電を揃えずに身軽に滞在できる。そして色々な人と会える。
シェアハウスは経済的な理由と、人と交流するのが楽しいという、2つのメリットがありますね。

コロナ期もシェアハウスにいたのですが、シェアメイトは近くの職場に出勤することが多く、日中一人で家にいることが多くなりました。
仕事もオンラインで在宅になり、黙々とやっている中で、この状況は自分にとってはよくないな、と思ったんですね。
そのタイミングで家守の話もあったので、やってみたいと思ったのです。

ーーー共同生活に慣れているんですね。

はい、共同生活の経験もあるし、自分の経験の延長線上として誰かの価値になればいいな、と思いました。
自分の得意なことで、誰かの助けになればいいですよね。

大学時代に寮生活をしたのがきっかけだったと思います。
先生もおらず、自分たちでルールや役割を決めて生活をしていくわけですね。
寮長もやりました。トラブルもありましたが、コミュニケーションがとれれば、ほとんどの問題は解決する気がします。

なぜ寮生活をしたいと思ったかも、原体験があります。
高校のとき、周囲の友人が寮生活を始めていました。
久しぶりにその友人たちに会ったときに、こういっては言葉が適切ではないかもしれませんが、「大人になっているな、成長しているな」と感じたんですね。
そのときはなぜか寮生活がその原因だと感じたんです。
そこから、自分もそういった生活をしてみたいという憧れがありましたね。

ーーーきょんさんの生活スタイルの延長線上に家守があるのですね。

実際に家守をやっていて大変だったことや良かったことなどはありますか?

大変だと感じることはほとんどないですね。

共同生活が長いから、耐性がついているのかもしれません(笑)
このケースは初めてだな、と思うことはありますが、家守を辞めたいと思うほどのことはありませんね。

良かったことは、たくさんあります!
例えば、人が近くにいる安心感。
いろいろな人が出入りして、「こんな生き方があるんだ」「こんな仕事があるんだ」という発見があることが楽しいですね。
素敵な人たちに出会えて、自分の人生のサンプルが増えた、という感じでしょうか。

私自身もいろいろなADDressの家を巡ったりしますが、
遠くの親戚に会いに行くような感覚があります。
ADDressがなければ知らなかった土地やその地域の人たち。
お互いどちらかがADDressを離れても繋がっていられるんだろうな、という実感があります。
全国に行きたい場所、会いたい人がいるのが本当に幸せなことだな、って思うんですよね。

ーーーADDressを通してつながった人たちにまたどこかで会える、という期待がありますよね。

滞在して寝食を共にするから、印象に残ると思うんですね。
肩書きとかでそもそも出会わないから。名前くらいしか知らなくて。関係性がフラットなんですね。
会員同士もそうだし、家守と会員の関係性もフラットだと思っています。
その業界では凄いような人に、普通に出会って話ができたりもします。

ダイニングやリビングなど共有スペースで出会う。
お風呂の後だったり(笑)。文字通り、着飾っていない姿で出会うんですよね。
あまり、そういったシチュエーションてないんじゃないですか。

ーーーADDressの家は、お客さんというよりは遠い親戚の感覚に近いですね。

そういえば、別の家に滞在したときに、ダイニングで蜘蛛が出て、そのとき一緒に滞在していた会員と協力して屋外に逃がした経験を思い出しました(笑)

そうそう、鎌倉B邸にも蝉の入居希望者が、扉を開いた瞬間に入ってきたりしますよ(笑)
会員の中で虫が大丈夫な人が虫捕り網を持ってきたりね。
いきなりヒーローが出現したりします(笑)

ADDress 鎌倉B邸 部屋

ADDressの世界観を体験できる鎌倉B邸

ーーー家守として鎌倉B邸をこんな空間にしたい、という思いはありますか

鎌倉B邸はADDressのフラッグシップ物件です。ADDressといえば、とイメージを持って初めて利用される方も多いんですね。
だから、ADDressの世界観を感じられる場所にしたいな、と思っています。
例えば、自分自身が他の家に行ったときに集めた情報をまとめたり、訪れた人の興味に合わせてADDressLifeを提案できるようにしています。

あとは、共同生活の楽しさを知ってほしいと思っています。
自分の中でも、「共同生活の心構え」のようなものを文章化する必要を感じていて、
今作成しているんです。

共同生活で衝突はあってもいい。
水回りや掃除、モノの置き方って個性が出るんですよね。衝突が起きやすい場所なんです。
でも、他人の行動に違和感を感じたら、それは自分の価値観に触れている部分なんですよね。
それを見つめるようにしています。
他者と暮らすことで、自分が見えてくるんですね。

それぞれがやりたい生き方、暮らし方を尊重したいと思っています。
ルールも書いて貼っておくのではなく、風景として見せる方法を考えています。
例えば、綺麗な部屋であれば綺麗な状態を保ちたいと思うし、
専用ベッド(※)を利用している長期滞在の方がやっていることは、予約会員も自然とやってくれたりします。
あとは、掃除とかもやりすい仕掛けを作ること。
水回りのそばに掃除道具が目に付く場所に置いたりしますね。

(※)専用ベッド・・・ADDressの特定の家に自身の専用ベッドを持って契約している人。詳細はこちら

ーーー道具がすぐ手に取れる場所にある。
それによって掃除をするハードルが下がりますよね。

一方で、情報を全て出さない、ということも意識しています。
例えば物の置き場所とか。掲示しておくことはできるのですが、少しわかりづらさも残しておきます。
ちょっとわからないことを近くの人に聞く。それによってコミュニケーションが生まれる。
それが自然に生まれるように意識してデザインしています。

ただ、鎌倉B邸は動線が構造上「必ず誰かと出会う」ようになっていないので、
人と関わらずに籠って滞在したい人にとっては、それも可能な環境です。
良くも悪くも、匿名的になれる空間ですね。

***

鎌倉B邸は滞在人数が最大10人程度と多く、広い共有スペースにそれとなく人が集まる風景が特徴です。

思い思いに食事したり、読書したり、料理を作ったり、仕事をしたり。
お互いの程良い距離感が心地よさの源泉だと感じます。
それもきょんさんの考え方や想いがこの建物を包んでいるから。
インタビューの間も、キッチンで料理をするいい匂いが流れてきます。

ADDress 鎌倉B邸 部屋

ーーー広い家ですし、なかなか家守一人で管理というのも難しいですよね。

専用ベッドを利用した長期滞在者が良い人ばかりで。助けられています。
例えば、掃除が好きな人は共有スペースも何気なく綺麗にしてくれる。
コミュニケーションが得意な人は、家守が不在の間に訪れた会員に家の中を案内してくれる。

共用スペースを綺麗にするのが家守の仕事、ではなくて、
みんな掃除をしやすくするための仕組みやデザインを作るのが家守の仕事だと思っているんですよね。

けれど、その仕掛けが強制にならないように気をつけています。

「あなたやっていないよね」となるのは嫌で。
やっていないことで居心地が悪くなるようなことは避けたいと思っています。
やれるときにやりたい人がやれることをやる。
それが共同生活だと思っています。
人それぞれが、得意なことも、やれるタイミングも違うから、上手く回っていたりします。

ーーー今後こうやっていきたい、ということはありますか?

未来は決めずにやっていきたいと思っています。
ただ、このエリアに定住しているから、街に行けば知り合いや顔なじみができてきて、その面でも楽しくなってきていますね。

例えば、会員によくお勧めする「茶飯事」という和食屋さん。
茶飯事の大将がADDressの家に来てくれたこともありますし、一緒に釣りにいったこともあります。

それから、北鎌倉のマルシェもつい最近開かれたのですが、
専用ベッドの長期滞在者と一緒に、出店の際に使用する竹を近くのお寺の境内へ伐採しに行ったり、当日スタッフとしてお手伝いしたりしました。
googleマップで検索するのではない、ここに定住している立場ならではの
紹介を会員にできればいいな、と思っています。

北鎌倉にはお寺がたくさんあり、いろいろな体験もできますよ。
例えば、円覚寺では早朝6時からの座禅体験ができたり。
東慶寺では写経ができたりします。

無理せず過ごせる暮らしの場

鎌倉B邸は、共同生活を通してADDressの世界観が体験できるところ。
無理ない、程良い距離感のある暮らし。
歴史ある古都北鎌倉に、緑豊かで鳥の鳴き声が聞こえるような隠れ家があります。

最後にきょんさんは、寮生活1年目の大変だったときのことを話してくれました。

ADDress 鎌倉B邸 家守 きょんさん

大学での寮生活1年目。気持ちが張っていて、いっぱいいっぱいになっていたんです。
周囲に迷惑かけちゃいかない、自分でなんとかしなきゃ、と一人で頑張っていて。
けれどそんなとき、私の話を聞いて受け止めてくれた寮生がいました。
解決したわけではないけど、救われたんですね。その人にも「話してくれてよかった」と言われました。
そのときに気づいたんですね。迷惑かけちゃいけない、と思うことは、自分も迷惑かけられたくないと思うマインドがあるって。
迷惑はかけあってナンボ、支え合ってナンボ、弱みを見せあってナンボだって思っています。

暮らしの中で強がるってしんどいですよね。
だから、この鎌倉B邸も、誰もが無理せずにいられる暮らしの場にしたいんです。

***

ADDressのフラッグシップ物件、鎌倉B邸。
私も緑に守られているようなこの家が好きで、喧騒を離れて過ごしたいときに来ています。
一緒に滞在している会員との心地よい距離感も、家守のきょんさんや専用ベッドの長期滞在者、予約の滞在者で作り上げているもの。初めての人も再訪の人も、分け隔てなく受け入れてくれます。
誰もが自然体で暮らせる、この家に来てみませんか?

この記事を書いた人

高石典子

2020年8月よりADDress会員。月の半分はADDressの家を巡り、半分は自宅で過ごす。中学・大学生の2人の子の母。フルリモートで仕事をしており、母親業もリモート化できるのではと実験中。仕事はキャリアカウンセラー&ライター。喫茶店での読書と銭湯後の一杯が至福のひととき。得意技は「ポジティブ変換」。