「二拠点生活」というと、都市に住みながら地方にもうひとつの拠点を持つ形を思い浮かべる方が多いかもしれません。時久史嵩さんの場合は、その逆。今年の春に東京から山形県に移住し、そのうえでパートナーと一緒に奈良県へ「通う」暮らしを続けています。
IT企業のカスタマーサクセスとしてフルリモートで働きながら、パートナーとブックカフェの開業準備も進める時久さん。学生時代から「アドレスホッパーになりたい」と思い続けてきたという時久さんに、移住と二拠点を両立する暮らしのリアルを伺いました。
「いずれ東京を出る」と決めていた
時久さんは広島出身。高校進学を機に上京し、約10年間東京で暮らしてきました。現在はIT企業のカスタマーサクセスとして働く社会人4年目です。
東京を出たいという気持ちは、大学生の頃——7、8年前から漠然とあったそうです。そんな中、東京で今のパートナーと出会いました。
時久さん「僕もパートナーも、東京の騒がしさ、人混みがあまり好きではなくて。満員電車だったり、都心に出るときの渋滞だったり、ストレス要因が多かったんです。」
青森出身の彼女とは「それなら一緒に、どこか東京以外のところに行こう」と話すようになりました。会社への働きかけも数年がかりで進めていたといいます。
時久さん「会社には『フルリモートにさせてください』と数年前から話していて。調整ができて、今年4月からフルリモート勤務になったので、思い切って東京を飛び出してみた、という感じです。」
有休1週間の「お試し滞在」が、移住先を決めた
移住先の山形県との出会いは、偶然でした。きっかけは、スポットワークサービス「タイミー」がかつて実施していた「タイミートラベル」。地方の事業者のもとに1週間ほど泊まり込みで働きながらその地域を知り、移住につなげるプログラムです。有休を1週間使って応募した先が、山形県小国(おぐに)町でペレットストーブ(薪ストーブ)を手がける事業者でした。


時久さん「ただストーブを売っているだけではなくて、『日本のエネルギー構造をガラッと変えていく』という大きなビジョンを持っていらっしゃる方だったんです。小国町は面積の95%が森。それなら目の前の木をしっかり使ってエネルギーにして、みんなで分け合って生きていくのが一番いい方法なんじゃないか、と。僕はそこにすごく共感しました。

仕事の内容も面白かったし、自然環境も良くて、ご飯も美味しくて、なにより人がすごく良かった。ずっと忘れられなかったんですね。気づいたらパートナーと何回も遊びに来るようになっていて、『東京を離れるなら、一旦ここに住んでみよう』とふと2人で思いついて。今年の4月に、えいやでこっちに来ました。」
移住にあわせて、医療業界で働いていたパートナーは退職。現在は2人で、地元にブックカフェを立ち上げる準備を進めています(後述)。
奈良への「通い」は、ADDressで
奈良との二拠点は、山形に移住する前、東京に住んでいる頃から始まっていました。きっかけは、パートナーの知り合いが奈良県で営む、ある場所でした。
時久さん「地元にある古い家を自分でDIYして直しながら暮らしていく、というプロジェクトをずっとされている方がいて。そこにパートナーと共に何回も足を運びたいという話になったときに、「これこそADDressを使えばいいんじゃないか」と思ったんです。彼女はその方のもとに泊まって、僕は一緒について行ってADDressに泊まる。それが一番面白い使い方だと思ったんですね。」
そこでなぜADDressを選んでいただいたのかというと、実は時久さん、ADDressがクラウドファンディングをしていたサービス最初期からその存在を知っていて、「ずっとやりたかった」サービスだったのだそう。ただ当時は学生。キャンパスに通わなければならず、一度は断念していたのでした。
学生の頃からADDressを知っていたとは、二拠点・多拠点やローカルな暮らしへの関心が人一倍強かったのかもしれません。そのルーツを尋ねると、もともとひとりで青春18きっぷを使って各地をめぐるのが好きだったのだと教えてくれました。惹かれるのは観光地ではなく、その土地の「生活」でした。
時久さん「観光地に行くのが好きなのではなくて、その場で暮らしている方と直に接するのが一番好きだったんです。地元の方が普段何を食べているかとか、地元のスーパーに何が並んでいるのかとか。そういう手触りのある生活感がすごく好きで。」


奈良への通いも、各地への周遊も。暮らしに合わせて使う
山形から奈良へは、荷物が多いため車で移動。片道およそ12時間の道のりです。一度行くと1週間から2週間ほどまとめて滞在するリズムだといいます。
時久さん「山形から奈良へは、北のルートだと北陸を通るので美味しい魚介が食べられて、南のルートだと長野を通るので、おそばがすごく美味しい。おすすめです(笑)」
ADDressの家を使うのは、奈良での滞在だけではありません。移動のついでに少し足を伸ばして、四国や東北など各地を周遊して楽しむ拠点としても活用しています。
ADDressのプランは、この暮らしに合わせて柔軟に変えています。
時久さん「起点になっているのは『どれだけ奈良に行くか』ですね。奈良に行く期間が長かったときは5枚プランに、引っ越しと重なって行くのが難しかった時期は2枚プランにしてチケットをプールしていました。いまはカフェの立ち上げで忙しくて奈良に行けないので、一瞬だけコミュニティプランにして、行けるようになったらまた2枚や5枚、場合によっては10枚のプランに戻そうと考えています。」
二拠点生活・地方移住のお金のリアル
二拠点生活で気になるのが費用面。率直に聞くと、率直な答えが返ってきました。
時久さん「正直に言うと、東京で暮らしながらの二拠点は、費用面が結構きつかったなと思います。当時の東京の家賃が8万円弱で、それに対してADDressが月3〜4万円。結構圧迫されていました。でも本拠地を山形に移したことで、家賃が半分以下になったんです。浮いた分をADDressに回せると思うと、すごく合理的だなと思っています。」
一方で、「地方に住めば生活費が下がる」というイメージには釘を刺します。
時久さん「家賃は半分以下になりました。すごく嬉しいんですけど、逆に言うと安くなったのはそこだけですね。食料品や、車がないと生活できないので毎月の車の費用、外食の費用なんかは都心部とあまり変わらない。『意外と安くならない』というのは、僕も来てびっくりしました。」
それでも、地方ならではの「安くなり方」もあるそうです。
時久さん「食料品を安くするにはどうすればいいかというと、地元の農家さんと仲良くなることなんです。お米を安く譲ってくださったり、『野菜がたくさん採れたからあげるよ』とか。そういった関係になることも多いですね。」
お話を聞いていると、移住3か月とは思えないほど地域に溶け込んでいる様子です。本人いわく、自分が頑張ったというより、周りの方が優しく受け入れてくれたから。「最近どう?」「暮らしに馴染めてる?」と気にかけてくれる人たちの存在に、いまとても救われているのだそうです。



2人の夢が「合流」したブックカフェ
いま時久さんとパートナーが準備しているのが、小国町の近くでのブックカフェ開業です。オープンは今年9月末を目標に、彼女が立ち上げを担い、時久さんは本業を続けながら経済面の柱として支えます。

なぜブックカフェを?と質問するとこう答えてくれました。
時久さん「僕とパートナーの、元々やりたかった夢が合流した形なのかなと思っています。僕は学生時代ずっと読書会をやっていて、恩師が山梨の甲府でブックカフェをされていたので、『将来は絶対本屋さんをやろう』と心に決めていたんです。一方で彼女は昔からカフェ巡りが趣味で、カフェをやってみたいという思いをずっと持っていた。それだったら一緒にやればよくない?と。僕は本担当、彼女はカフェ担当で。」

東京を出て、山形に暮らし、奈良に通い、旅をして、店をひらく。こうして並べると盛りだくさんに見えますが、根っこにあるのは、学生時代から変わらない「手触りのある生活感」への憧れです。かつて断念した「アドレスホッパーになりたい」という夢を、時久さんはいま、移住×二拠点という自分らしいかたちで叶えています。

時久史嵩さん
広島県出身。IT企業のカスタマーサクセスとしてフルリモートで勤務。2026年4月に東京から山形県へ移住。パートナーとともに奈良県へ通い、滞在先にADDressを使う二拠点生活を送る。現在は2人でブックカフェの開業を準備中。
ブックカフェ「半径1メートル」
https://www.instagram.com/hankei_bookcafe
ADDressでの二拠点生活について、こちらのページで詳しくご紹介しています。二拠点・多拠点を知り尽くしたADDressスタッフのおすすめの家や、会員さんのインタビュー記事など、ぜひご覧ください。