会員との交流が、家守の一番の楽しみ【ADDress家守インタビュー】大洗A邸 佐藤さん

ADDressの特徴は均質化されていない滞在体験。
観光だけではなく、家守やその土地にいる方々、同じようにさすらう会員同士の偶然の出会いから始まる交流の楽しさ。
家々の個性や偶然性を楽しむことこそが、このADDressのサービスを満喫するコツです。
家の個性を形にする、家守の存在。
今回ご紹介するのは大洗A邸の家守、佐藤さん。
物静かで優しい男性。取材の夜も、
「まだ夕食食べてないですよね?お腹すきませんか?お菓子どうぞ」と気遣って勧めてくれました。

※佐藤さんは家守を退任しており、大洗A邸は家守を交代して運営しています。

大洗A邸 家守 佐藤さん

会員になった当初は、雰囲気に慣れなくて戸惑っていた

ーーーADDressとの出会いを教えてください

去年(2020年)の春、会社を辞めたんですね。周囲の30代の先輩とかを見ていて、すごい仕事人間が多くて。
このまま会社にいて30代になったら何もチャレンジできなくなるかもしれない、と危機感を感じました。
自分が年を取ったときに、子どもや孫に「自分はこんなこともやりたかったんだけどね」と過去形で話している自分が想像できてしまって。
そんな自分は嫌だな、と思ったんです。

会社を辞めて世界を見て回ろう、と思った矢先にコロナの状況になり。
それなら車で日本を回ろうと思って車中泊で西日本を巡り始めました。
ADDressというサービスを知ったのは友人から「こんなサービスあるよ」と教えてもらったからですが、そのときは「ふーん」という感じで印象に残りませんでした(笑)

8月になって車中泊がもう暑くてしんどくなってきて。
「車で移動は続けつつ、家に滞在したいな」と思っていくつかサービスを比較した結果、ADDressの会員になることにしました。

ーーーまずは会員になったんですね。

はい。ホッピングは故郷の徳島から始めて、広島、大阪と巡りました。
ADDressの家では、リビングで会員と会ったりするでしょう。
最初は慣れなくて、「このタイミングで話しかけていいのかな?」と戸惑っていました。
食事中なら何となく自然に会話しますが、食事が終わってダイニングテーブルに座っていると所在ないというか・・・。
話しかけてよいか、頻繁に話して大丈夫か、とか気を遣ってしまって。
落ち着かなくて、個室に早めに戻ることもありましたね。

けれど、そのうち知らない会員と会話することにも慣れてきました。
南伊豆A邸を訪れたとき、「これがADDressの雰囲気だ!」と思える体験がありました。

家を訪れたとき家守が不在で、その代わりに滞在していた会員がまるで家守のようにいろいろ案内してくれて。
家の使い方から周囲のお店情報まで親切に教えてくれたんですね。夕食も気軽に誘ってくれたり、地元で買ってきた素材をシェアしてくれたり。
会員なのに、家守みたいに自然に迎えてくれる。原付で日本中を回っている、名物会員でした。週1しか働いていないらしい笑
話もとても面白くて、たった一泊なのにとても印象的な滞在になりました。

そんな面白い人たちとの出会いがあって。

普通だと、どこかに家を構えて、そこから一つの会社に毎日通勤するのが会社員として当たり前、と思いますよね。
今はコロナなので状況も変わってきていますけど。
当時はコロナが騒がれ始めたばかりで、まだテレワークが一般的ではない時期。
その時期に、「好きな場所で仕事をしたいから、それができる仕事にしよう」と考えて動く、少し変わった考えの人が多かったんです。
刺激と、元気をもらいましたね。

だから、ADDressを辞めようかと迷ったときに、もはや一人で暮らす家を借りて住むイメージが持てなかったんです。そのほうが不自然に思えて。
家守だったら、面白い人たちが訪ねて来てくれるじゃないですか。
家守をやりたい、と思ったのは会員としてサービスを利用して、面白い人たちに出会えたことがきっかけです。

ーーー人との出会いが家守になりたいと思ったきっかけだったのですね。どうやって家守になったのですか?

僕が家守をやりたいと思っていると言っていたら、清川村の家守の河野さんが、新たな家守を募集していることを教えてくれたんです。
そのときは4か所の家守募集があって。
僕は車を持っていたのと、海が近いところがよかったので、その両方を満たす場所がこの大洗でした。
早速応募しましたね。
仕事はフリーのエンジニアなので、どこでも仕事はできますし。
掃除や洗濯も苦ではないので、家守はできそうな気がしていました。
家守を始めてみたら、掃除や洗濯も進んで手伝ってくださる会員の方が多くて驚きました。本当にありがたいと感じています。

開けて居心地のよい街、大洗

開けて居心地のよい街、大洗

ーーー家守として大洗に来たときの第一印象はいかがでしたか?

綺麗で居心地が良さそう、と思いましたね。道路も広くて開けている。
それと、大洗A邸の周辺には昔病院があり、この家にはお医者さんが住んでいたんです。
地域のみなさんにとても慕われていたお医者さんで。
近所のおばあさんやおじいさんに会うと、
「あの病院でお産をしてね」とか「先生にはお世話になった」とかよくお話を聞きます。
地域とそういったつながりのある家だったと思うと、嬉しく感じますね。

ーーー大洗A邸をこういう家にしていきたい、という思いはありますか?

自分の家のように、気兼ねなく寛いで過ごせる家にしたいですね。
僕はコーヒーを淹れるのが趣味なのですが、朝リビングにいた会員にコーヒーを淹れていたりします。
自分のできることで人に寛いでもらえたら、緊張も緩めてもらえたら、そんな思いがありますね。

僕自身が家守を楽しんでいるので。
この間は、砂利敷きの庭でバーベキューをやりましたよ。
火を囲んで、めいめいが好きなものを焼いてね。
何人かの会員と火を囲んで話しているうちに、悩み相談のような時間になってきて。
その日にあった人同士なのに、じっくりと深い話ができた気がします。

大洗A邸 家守 佐藤さん

***

佐藤さんの淹れたコーヒーは、まろやかで優しい。
水も電気ケトルではなく、コンロで沸かすのだとか。
「なんとなく、お水も丁寧に沸かしたほうが、美味しくなる気がするんです」
じっくり、丁寧に淹れられたコーヒー。
大事に飲みたくなります。

リビングの隅に置かれたギターは、佐藤さんが目下練習中。
ときどきギターの音が聞こえてきます。
「楽器が弾けるって憧れなんですよね。流しのギター弾きとか、かっこよさそう」
来訪するときの楽しみにもなりそうです。

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ーーー大洗のおすすめスポットはありますか?

大洗のおすすめスポット

磯前(いそさき)神社はぜひ行ってみてください。海に立つ鳥居もあります。
季節でいうと冬。冬至の日がお勧めです。

この日、会員と行ったのですが、鳥居の中を太陽が昇ってくるんです。
神社には海に面した長い階段があるのですが、冬至の日は太陽がまっすぐ階段を昇ってくるように照らしていました。
そう設計されていたのか、と驚きましたね。

磯前神社 鳥居

大洗は漁港なので、朝から港に行って漁船が動くのを見るのも楽しいですよ。
漁師さんたちが忙しそうに働いていて。

市場なら、隣の町ですが那珂湊(なかなみと)に大きな魚市場があります。
一人では食べきれないほどの魚が、安く手に入ります。
みんなでシェアするのもいいですね。

大洗 魚市場

それと、これは他の会員から教えてもらったのですが、
海にいったらぜひ足を水に浸けてみてください。
すっごく気持ちいいですよ。
僕は海に行くたびに足を浸けています。

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翌朝、一人で大洗の海岸に出かけて海に足を浸けてみました。
波の動きが感じられ、足の下で砂がさらわれていく感覚が気持ちいい。
しばらく感覚を楽しんでいるうちに、膝まで上げていたスカートに大きい波がかかってびしょ濡れになりました^^;
「それはお約束ですね。濡れても気にしない、気にしない」
佐藤さんの声が聞こえるようです。

大洗でサーフィンにチャレンジし、ギターを練習中の佐藤さん。
ここ数年は大洗に滞在して、サーフィンの練習に勤しむとともに、コロナで中止になっている地域のイベントにも参加してみたいそうです。
穏やかな笑顔で迎えてくれる佐藤さんに、会いにきませんか?美味しいコーヒーも味わえるかもしれません。

この記事を書いた人

高石典子

2020年8月~2年間ADDress会員として、月の半分はADDressの家を巡り、半分は自宅で過ごす。HR業界が長く、キャリア支援&ライターの仕事に従事。高校・大学生の2人の子の母でADDress利用時は母親業もフルリモート対応。喫茶店での読書と銭湯後の一杯が至福のひととき。インタビュー執筆では「その人にしかない魅力を引き出すこと」をモットーにしています。