いつもの通勤が、特別な1日に。制約からワクワクを生み出すADDressの楽しみ方【会員インタビュー】所さん

子供の頃、たとえ近所でも知らない道を初めて見つけた時、なんだかワクワクした。公園で初めて出会う誰かと一緒におにごっこをした時、いつもの公園がいつもより楽しく感じた。

「未知」のものと出会うこと、知らない人と出会うこと。
それは、私たちを心からワクワクさせてくれる経験だった。

だけど、大人になるにつれ、知っていることも、知っている人も増えていく。
未知のものより、「既知の安心」の中で毎日が過ぎていく。
そうして気がつくと、日常からワクワクが消えてしまうこともある。

だけど一方で、私たちはもう一度そのワクワクを取り戻すことだってできるはず。

大人になった私たちは「初めて出会うこと」を自分から探すことも、「初めて出会う人」に自分から会いにいくことだってできる。

今回は、お仕事の制約がありつつも、独自の工夫でADDressを楽しむ所さんにお話を伺いました。

介護でUターン、地元での新しい役割と暮らし方

約18年ほど前、親の介護の関係で、実家のある柏市に戻ってきました。

それまでフルタイムの仕事をしていましたが、転居を機に退職し、介護のかたわら、ボランティア活動やオンラインの古本屋のオープンなど、いくつかの活動を小さく始めました。

その後2013年に柏市で非常勤の「地域づくりコーディネーター」の公募があることを知り応募してみたんです。すると、40人中1人という倍率でしたが幸運にも採用が決まり、そこから10年間、市民活動課の「地域づくりコーディネーター」として働いています。

柏市には21のふるさと協議会と、300ほどの町会があるのですが、それらの公益団体の活動を支え、課と地域の間に入るのが「地域づくりコーディネーター」の仕事です。

私はもともと本が好きだったこともあり、仕事に関係する本も含め、たくさんの本を読んできました。その中で「ダブルローカル」や「TURNS」などの書籍を通して2拠点生活というものに興味を持ち始めました。

おもしろそうだと感じ、調べていた際に、ADDressに出会いました。

仕事上、まとまった時間が取れるわけではないので、当初はADDressをめいっぱい使いこなせるか不安がありました。

でも迷っていても仕方がないので、「やってみるか!」となかば勢いで、昨年4月からADDressを利用しはじめました。

ADDressの家を利用すれば、普段の通勤も、特別な1日に

はじめてしばらくは、まとまった時間が取れなくても「職場の近くに滞在して、仕事を織り込みながらADDressを満喫する」という方法があることに気がつきました。

たとえば野田A邸は職場からも近いので、あえて家には帰らず、野田A邸に滞在して、翌朝職場に出勤して、また野田A邸に帰る、という使い方もできるじゃないか、と。

もちろん自宅から出勤した方がアクセスはいいですが、こうやって別の家からの出勤を織り交ぜていくことで、日常にADDressが溶け込んで行き、いつの間にか、自分の家も、ADDressの家のひとつのように見えてきたり、ADDressの家で学んだことを自宅に活かしてみようとすることもありました。

職場に行くルートが違うだけで、日常の風景が変わり、生活もちょっと変わるんです。

「必要もないところにあえて出かける」という魅力

ADDressの利用開始から1年半が経ちますが、正直、立地としては辺鄙なところにある家も多く、最初の方に訪れた家も最寄駅から徒歩20分とアクセスもそこまでよくなかったんです。

観光や仕事が目的であれば駅近の便利な場所に宿泊したりするので、ADDressの家がないと絶対に行っていなかったような場所です。

ですが、その家について、台所の脇の「ここであってるの?」というような入口から家に入り、夜に他の住人が帰ってきて、ドキドキしつつ、お互いに挨拶そこそこに部屋にひっこんだりするような、観光ホテルでは絶対に味わえない体験をするんですね。

そういった経験を通して、「そこに行かなくてもいいところにADDressがあるから行ってみる」というのが、ADDressらしい体験であり、魅力だと感じるようになりました。

豪華な家と下町の家、クールな家守とウエットな家守。ギャップが生むおもしろさ

時には失敗したなと思うこともありますが、それは決してネガティブな経験ではなく、自分と家、自分と家守との相性を知っていくプロセスだと思っています。

ハード面では、かなり放置されている空間もあれば、片付けが行き過ぎなくらい綺麗な空間もあります。ソフト面では、家守さんがクールな人もいれば、あたたかく迎え入れてくれる人もいます。

どれがいいというわけでもなく、そのギャップやランダムさがおもしろいと思いますし、均一化されていない感じがADDressならではの良さですよね。

各地を巡って感じた「その家だから」体験できる魅力

各家での体験も1つ1つ全く違っていて、おすすめも1つに絞れないほど、様々な体験をしました。

鎌倉B邸では、滞在の翌日、シェアハウスの住人のお別れ会があると誘ってもらい、飛び入りで参加を決めました。当日は地域の知り合いの方もたくさん来て、さまざまな料理も振る舞われ、知らない人と喋るような盛りだくさんの体験をしました。

清里A邸では、窓の外に高原が広がり、こんなに気持ちのよい豪華なところに滞在して良いのだろうか、と感じるほど贅沢な空間を味わいました。

震災のことを知っておきたいと訪れた石巻A邸では、家守の方が被災された方だったこともあり、かなり長時間震災のお話をお伺いすることができました。

翌日は震災遺構で実際の様子をみて、とても大切な体験となりました。

野田A邸には最初の滞在者として滞在し、その後も何度か滞在しています。ここの家守はお二人とも若く、ご自宅をADDressの家として提供されていますが、ご自身の部屋や作業場以外は、ほぼフルオープンにされているような様子でした。

正直、私のような高齢世代の人間からするとそう簡単にはできない発想だと思うのですが、これこそ「シェア」の新しい形だと感じますし、「自分の家を開く」という感覚がおもしろいなと感じましたね。

同伴制度、交通系サービス、レンタサイクル。様々な工夫で、楽しくお得に旅をアップグレード。

ADDressには同伴制度があるので、私は大学時代からの旧友とこの制度を使ってADDressの家に滞在することもあります。

他にも、JR東日本の切符が3割引になる「大人の休日倶楽部ジパング」というサービスや、ハローサイクリングという乗り捨てできる電動アシスト付き自転車のサービスを利用しながらADDressでの遠出の旅を楽しんでいます。

年齢に関わらず、いつからでも、私たちは日常に「ワクワク」できる

独自の視点で、制約があってもADDressを楽しむ方法を見つけ、1年半のADDressライフを送った所さん。

つい最近、電動アシスト付き自転車も購入したとのことで、今後ますます楽しみ方が広がりそうな予感がします。

新しいことを始めるには不安や懸念はつきものです。そして、大人になればなるほど、新しいことへの第一歩は重くなるもの。

ですが、所さんのように「とりあえずやってみる」ことが当たり前の日常に変化をもたらすきっかけになるかもしれません。

そして、その1歩さえ踏み出せれば、年齢に関わらず、いつからでも、何回でも、自分の人生に「ワクワク」をもたらすことができるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

三上ゆき

一般社団法人READYBOXで副代表をしながら、ライターやフリースクールの先生もしています。 「いいことを、淡々と」がモットー。