暮らし方をミックスする幸せにたどりついた【ADDress会員インタビュー】石井さん

石井慎一さん(42歳)はメンタルヘルス事業の会社に勤める男性です。4年前に転職し、同時に東京から大阪へ引っ越しました。

いまではADDressと自分の家の多拠点生活を送っています。

インタビューをはじめてすぐ、なにげない雑談のつもりで「いまどちらにおられるんですか?」と僕が訊くと、石井さんは大阪の自宅近くにあるADDressの家にいるのだと言います。

なぜ自宅に帰らないのだろうという表情を僕がしたのでしょう、石井さんは「せっかくADDressのインタビューを受けるならADDressの家にいた方が気持ちが上がるなと思って予約したんです」と教えてくれました。

私はなんだか嬉しくなってしまいました。それと同時に、ずいぶんと慣れた使い方だなとも思いました。でもそれもそのはずで、石井さんはすでにADDressを2年間以上使われているのです。

お話を聞いていくと、石井さんは2年間の多拠点生活を経て、自分にとって最も幸せな暮らしの形を見出したようでした。

心と身体のストレスが少ない、健康的で豊かな暮らしの形です。

その形とはいったいどのような暮らし方なのでしょうか?そしていったいどのようにしてその答えにたどり着いたのでしょうか?石井さんのADDress生活についてお話を伺いました。

心と身体の健康の大切さに気づき、メンタルヘルス業界へ

――― 石井さんはどういったお仕事をされているんですか?

EAP(従業者支援プログラム)という業界で働いています。職場におけるメンタルヘルスサービスを扱う業界です。自分が勤めている会社では例えば、カウンセラーのコールセンターサービスを法人向けに提供しています。

導入した会社の従業員の方は24時間無料でカウンセラーに悩みを相談できるんです。会社における悩みだけでなく、家族関係や借金などの相談も可能です。社内の人事にはしづらい相談もできるということですね。

自分は法人営業なので、企業の人事や総務にサービス導入のご提案をするのが仕事になります。大阪支店長を勤めているのでオフィスは大阪にありますが、基本的にはリモートで働いています。

――― どういったきっかけでメンタルヘルスの仕事をすることにしたんですか?

いまの会社には4年前に転職してきたんです。それまでは東京の人材派遣会社で働いていました。その前職の会社がいま勤めている会社のカウンセリングサービスを導入していて、たまたま利用することがあったんです。

当時、父がガンで亡くなったんです。どうやって気持ちを整理すればいいか分からなくてカウンセラーさんに相談したら、気持ちがだいぶ楽になりました。家族も利用できるので母にも使ってもらったんですが、母としても良かったみたいで。

また、東京にいたころ僕は一度離婚しているんですが、そのときめちゃめちゃショックだったこともあってカウンセラーさんに話したんです。そのおかげで、離婚を受け止めて前に進もうと思えたんですよね。

――― 何度も助けられた経験があるんですね。ちなみにカウンセラーさんとそうでない方とでは話しやすさなどにおいてどんなところが違うのですか?

家族や友達同士だと話せることもあるけど、逆に話せないこともあるじゃないですか。その点、カウンセラーさんは、第三者で一期一会だからこそすべてをさらけ出せるんですよね。あと皆さん話を聞くプロだから、否定せず、すべてをいったん受け入れてくれるんです。

答えを与えてくれるというよりも、問いかけをしてくれるので、自分で深ぼって考えることにもなります。そのおかげで、頭のなかのモヤモヤしたものに言葉がくっついてくるんです。

そういったカウンセラーさんのすごさに、自分が実際にサポートしてもらったことで気づけたんです。

そして、人生をいきいきと生きるには心と身体が元気でなければいけない、とそのときに強く思ったんです。カウンセリングを通してみんなの辛さを軽くしていけたら、いい人生を送ることができる人が増えるのではないかと考えて、いまの会社へ転職をしました。

リモート体制は働きながら旅をするチャンスだった

――― ADDressを始めたきっかけは何だったのですか?

転職して大阪に来た半年後くらいに1回目の緊急事態宣言が発令されたんです。それまでは出社でしたが、そのときからリモート体制になり、自分の家で働くようになりました。

実はもともと、旅をしながら働くことに興味がありました。昔、高城剛さんの『LIFE PACKING』という本を読んで、スーツケース1つで世界を周りながら働いている人の存在を知ったんです。

(大阪で借りていたお部屋)

サラリーマンにはとうてい無理な話だと思っていたんですが、リモートワーク体制のいまであれば、荷物さえ減らせれば自分でもできるのではないかと。

それで年末に向けて荷物を1つ1つ減らしていきました。その作業はとても楽しかったです。自分にとっての一軍の持ち物を探究することができたので。

結局スーツケース2つくらいには収めることができました。

(ADDress生活中の荷物)

日帰り出張が心身ともにストレスだった

――― ADDressを始めたのは、リモートワークになったことで、旅をしながら働くという憧れを実現できそうだなと思われたからなんですね。

あと、営業という仕事柄、出張が多かったんですよね。いつも日帰りか1泊で、アポもぎゅうぎゅうに詰めていました。

でも身体に負荷がかかるし、お客さん側にも負荷をかけるんです。それがすごくストレスでした。

それにせっかく行ったのに、その街のことを知らずに帰ることになるのも嫌で。ADDressで一週間くらい滞在して、夜や休日を街歩きや観光に使えたらおもしろくなるんじゃないかなと思いました

ちょうどその頃、自分の営業エリアの九州や愛媛にADDressの家が増えてきたので、出張と組み合わせて使おうと考え、2021年の2月に利用を始めました。

賃貸の家は解約し、京都伏見A邸専用ベッドを契約して、そこを拠点に各地へ移動することにしました。

前泊することで出張のストレスが減った

――― ADDressをすでに2年ほど使われていますが、いかがですか?

出張するときのストレスは確実に減りました。例えば福岡に出張する場合、昔は大阪を始発くらいの電車で出て9時に着くといったスケジュールでした。

でもADDressを始めてからは、アポ前日の18時ごろに仕事を終わらせてから福岡に移動します。

そうすると夜にはADDressの家に着くので、朝までゆっくり寝ることができます。そしてアポ当日はその家から通勤するんです。

門司港で人の輪が広がっていく

――― 出張先で訪れた街をくわしく知るということもできましたか?

はい。門司港A邸(福岡県北九州市)はまさにそれができた街でした。

街なかのお店に行って、ADDressで来ていることを伝えると「成矢さん(門司港A邸家守 岩本成矢さん)のとこね」と話がすぐ通じるんです。

共通の知り合いがいる人と話すことになるので、単に旅行で来るよりも街に自分の居場所があると感じられました。

おすすめはtent.というバーです。地元の方もよく来るんです。マスターのShuuさんがロングトレイル(登山道やハイキング道などを歩きながら、その地域の自然や歴史、文化に触れる旅)の有名な方らしく、ハイカーさんがこの店めがけてやってくることも多いそうです。

マスターの方が、いつも地元の方とADDress会員をつなげてくれるので、居心地がいいんですよね。そのおかげもあって、地元の人と旅行者という壁がないんです。

みんなtent.に集まっている人たちという感じで。また行きたいなとすごく思えるお店です。

(地元客や観光客でにぎわう夜のtent.)

――― 家守の岩本さんとはどんなお話をされたんですか?

もう3〜4回は門司港A邸に行っているんですが、滞在するときは必ず「時間あったらメシ行きましょう」と連絡するんです。

他愛ない話が多いですが、岩本さんはどうやって門司港を盛り上げるかという話をよくしているイメージがあります。

(カフェ四稀から見た門司港の街並み)

そういう話を聞くと、「この人、この街を愛してるんだな」とこっちも嬉しくなりますよね。岩本さんはA邸の横で四稀というカフェもやっているんです。そのカフェもいいところです。

旅先でのつながりがこうしてどんどん広がっていくのって、普通の出張や旅行だと起きないことですよね。

安心感とゆとりのあるADDress生活

――― 福岡出張が一気に楽しそうですね。

そうですね。出張の移動自体はどうしても疲れるんですが、ADDressで滞在する居心地の良さがそれを上回ってくれたのかなと。

これまでの出張よりも、心や身体において健康的で豊かでした。

――― ADDressでの滞在は石井さんにとって居心地のよいものだったんですね。

実際に使い始めるまではまったく想像もしていなかったんですが、初めて会う人たちでもなんだか安心感がありますよね。みんなADDressというコミュニティのなかの一員だからかもしれません。

そういう確かな共通項のおかげで、家ですれ違ったら挨拶したり、お互い気持ちよく生活できるように配慮したり。

普通のゲストハウスではなかなかそこまではしないじゃないですか。

――― 安心感がベースにある交流なんですね。

それに普通の旅行と違って、無欲というか、心にスペースがある気がするんですよね。

ノープランで、成り行き任せで過ごしてみようかなって思えるんです。一か所に1週間くらい滞在できるからですかね。

そのおかげで、普段は行かないであろう観光名所以外の場所に行く余裕が生まれたり、ホテル周辺だけではなく住宅街にも足を運んだりできました。

暮らし方をひとつに絞らないという幸せの形

――― 2年間のADDress生活を経て、石井さんのなかで何か変化したことはありますか?

いろんなことについて、ひとつに絞らなくていいのではないかなと思えました。

住む場所だって、大阪ひとつじゃなくてもいいんですよね。

フルでアドレスホッパーをしてもいいし、二拠点生活をしてもいい。ADDressを使わずに、ホテルに泊まってもいい。もちろん自分の家をもって暮らしたっていい。

自分のライフスタイルに合わせて、家の持ち方すら調整できるような世の中にいるんだということにADDressを使って気づいたんです。

逆にひとつだけに絞ってしまうと、ネガティブな方に目がいきがちなんです。

ずっと同じだとマンネリになって他のものがよく見えてしまったりするんですよね。ひとり暮らしのときは結婚して家に奥さんがいたらいいなと思い、でも結婚したらひとり暮らしの気軽さもいいなと思う。

人間ってめんどくさいですよね。

――― たしかにないものねだりをしがちかもしれません。

だからあえて住み方を定期的に変えてみるといいと思うんです。ADDressの古民家の風呂を使うからこそ、自宅のマンションの風呂もいいよなと思えたり。

会員さんとの交流も楽しいけど、ひとりの時間の大切さにあらためて気づくことができたり。

両方を行き来するからこそ、両方の良いところがもっと見えてくる気がするんです。

淡路島A邸で泊まったお部屋)

結婚生活もひとり暮らしも多拠点生活もいろいろと経験してきましたが、結局のところ、ミックスできるのが一番幸せだなというのが僕のいまのところの考えです。

いまは大阪に転勤してからお付き合いを始めて結婚した奥さんがいるんです。これまでADDressは1か月まるまる使えるプランを契約していましたが、もっと短期で使える新プランができたので切り替えようかなと考えています。

その方が、結婚後のライフスタイルにあった使い方ができそうだなと

2人で大阪にいるのもいいし、出張があるときにひとりでADDressでの交流を楽しむのもいいし、週末に奥さんと旅行として周るのもいい。それらをミックスすることのできるいまは自分の心や身体にとって結構良い状態だと感じています。

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▼石井さんが連載中のADDress生活についての記事も是非▼

「サラリーマンが旅するようにはたらく、暮らす、ミニマルライフ」

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この記事を書いた人

佐伯 康太

神奈川県横浜市出身。 ADDressで日本をざっくり一周し、ご縁のあった静岡県川根本町へ春から移住。町の場づくりに関わりつつ、本を売ったり文章を書いたりします。好きなものは形のいい松ぼっくりです。よろしくお願いいたします。