遊びながら楽しく学ぶ達人は、元自治体職員【ADDress家守インタビュー】静岡用宗B邸 佐々木さん

ADDressの特徴は均質化されていない滞在体験。

観光だけではなく、家守やその土地にいる方々、同じようにさすらう会員同士の偶然の出会いから始まる交流の楽しさ。

家々の個性や偶然性を楽しむことこそが、このADDressのサービスを満喫するコツです。

家の個性を形にする、家守の存在。

今回ご紹介するのは「静岡用宗B邸」の家守、佐々木ユキオさんです。

用宗(もちむね)はJR東海道本線静岡駅から西へ2駅。しらす漁が盛んな用宗漁港を中心とするエリアです。用宗漁港のすぐ近くに、築15年と比較的新しい家をDIYでリノベーションした静岡用宗B邸があります。

家守の佐々木さんは静岡市役所で20年勤務した後、40代で早期退職制度を利用して独立され、今は一般社団法人ローカルSDGsネットワークの代表理事として活動されています。

SDGsをゲーム体験を通じて対話で学ぶワークショップやレゴブロックを使ったクリエイティブ系のワークショップなど、「楽しく学ぶ」達人でもある佐々木さん。

ADDressとはどのように出会ったのでしょうか。

自由度の高い暮らし方に面白さを感じて

2021年7月に静岡市コ・クリエーションスペースのオープニングイベントに参加したとき、偶然ADDress代表の佐別当さんの話を聞いて、ADDressのサービスを知りました。

住む場所を自由に変えられる生活スタイルを支える仕組みが面白いと思いましたし、私自身、前職の静岡市職員時代に人口減少対策プロジェクトチームのメンバーだったこともあり、空き家を活用しながら関係人口を作り出すという考え方に興味を持ちました。

もともと将来は静岡と沖縄の二拠点生活をおくりたいと考えており、物件を探していたところ、2021年の9月に用宗で好条件で見つかり、購入を即決しました。

この用宗の家は港まで徒歩1分のほか、徒歩5分圏内に温泉・クラフトビールバー・レンタサイクル・海岸もあり、コンビニや飲食店も近くにあって便利なんです。

ただ、子どもたちの学校のこともあり、すぐに住むわけではないので、ADDressの会員に利用してもらおうと考えました。

また、2020年4月に独立開業しましたが、コロナ禍が始まった時期も重なったこともあり、リアルで他者と会う機会が極端に減ってしまったことにも危機感を持っていました。ADDressを始めたことで会員が次々と訪れ、貴重な他者との交流の機会となっています

人生100年時代の後半に向けて自然と独立へ

独立前は、静岡市職員として20年働いていました。3-4年ごとに異動するため、保健所や情報公開・個人情報保護、市税滞納整理から生活保護ケースワーカー、市民活動支援まで幅広い仕事を経験してきました。

さいごの市民活動支援の部署では、新たに市民活動支援のウェブサイトを構築する仕事を任されました。ウェブサイトのコンセプトを1から考えて実現していく仕事は楽しかったですね。

市民活動センターに団体登録するだけで、Googleなどの検索サイトで情報が表示されるような仕組みをつくり、自治体が公開している情報(オープンデータ)と組み合わせて地図上で市民活動を見えるようにするなど、いままでなかったコンセプトのウェブサイトを作りました。のちに別の自治体でも採用されることになったんですよ。

このように自治体職員としての仕事にもやりがいを感じてはいたのですが、人事異動によりどのような仕事を担当するのかは自ら選ぶことはできないこと、昇進に伴い現場の業務から離れていくこともあり、人生100年時代の後半に向けて、仕事外の学びの場にも積極的に参加していきました。

慶応大学が社会人向けに運営している慶応丸の内シティキャンパスで人材開発を専門的に学んだり、ソリューション・フォーカスというコミュニケーションスキル、LEGO® SERIOUS PLAY®、2030SDGs等のゲーム型研修ワークショップなど、好奇心のアンテナでキャッチしたものに関わるうちに、人事異動で動かされるのではなく、自分でキャリアを選択できるようになりたいと思い、早期退職制度を利用して独立するに至りました。

今は一般社団法人ローカルSDGsネットワークの代表理事としてSDGsの普及啓発、SDGsに取り組む人材育成に取り組みつつ、ビジネスゲームを使った企業研修、レゴ®シリアスプレイ®メソッドと教材を活用したワークショップ、PLAYFOOL Workshopなどクリエイティブ系ワークショップのファシリテーターをしています。SDGsの研修ワークショップは、リアルだけでなくオンラインでも行っており、単に知識を得るのではなく、楽しみながら対話を通じて深い学びが得られると好評です。

快適なリモートワーク環境にこだわり、オフタイムも充実させたい

静岡用宗B邸は、A邸家守の八木さんの協力も得て、DIYでリノベーションしました。1階のリビングとダイニングはグレーの漆喰を塗って非日常感を演出しており、シンクが直接見えないようにすることで生活感を消しています。

また、3つある個室のうち201と202は洋室で、天気のよい日は部屋から富士山を見ることができますし、和室の203は窓から水面が見える部屋となっています。

静岡用宗B邸でこだわっているのは、リモートワークをする方にとって快適な環境を用意すること。私自身もリモートで仕事をしているので、自分だったら欲しいもの、例えば、モバイルモニターの用意もありますし、201、202にはルーターを設置して有線LANでも接続できるようにするなど、ネットワーク通信の安定を図っています。

また、オフタイムにはぜひ用宗や静岡市の魅力に触れてほしいと考えて、リビングの壁に観光情報が記載された地図を貼ったり、地元のフリーペーパーや観光ガイドを設置するだけでなく、スマートフォンでも見られるようにオリジナルのgoogle mapsを作成するなど、地域や観光の情報も提供しています。

力をいれているのは、普段できないことを体験してもらうこと。用宗海岸は比較的波が穏やかなのでSUP体験ができます。2〜3日以上滞在される方にはSUP体験にお誘いしています。

自分ひとりではやらないけれど、誘われたらやってみようかなと思うことってありますよね。4月中旬頃からSUPを始めましたが、お誘いしたときに「やってみたいです!」と興味を持ってもらえるとすごく嬉しいです。今、SUPボードを注文していて、いずれは会員の皆さんが滞在時に使えるようにしようと準備をしています。

他にも気が向いたらですが、電車で来られる会員も多く、滞在中雨の日が続くと外出もできないので、ドライブとプチ観光も兼ねて、ランチに名物とろろ汁のお店「丁子屋」さんにお誘いすることもあります。

歌川広重の東海道五十三次丸子(まりこ)宿で描かれた名物茶屋の雰囲気を残したお店で、名物とろろ汁をいただくことができます。店内には、江戸時代に実際に使われた旅人たちの道具や、丸子宿丁子屋にちなんだ芭蕉翁、十返舎一九、歌川広重の作品が常時展示されており、歴史の趣を楽しむことができます。

静岡用宗B邸のコンセプトは「シェア」

静岡用宗B邸のコンセプトは「シェア」。私が使わないときに誰かが使える場所だと考えています。家自体をADDressの拠点として提供したのもシェアですし、キャンプ用のハンモックを普段は静岡用宗B邸に置いて会員が使えるようにするなどシェアです。これからSUPボードを置くのもその延長線上です。

アーティスト・イン・レジデンスをしてみたい

実は今年(2022年)4月から、京都芸術大学で空間演出デザインを学び始めました。2度目の大学生です。通信制ですがスクーリングの際には京都のキャンパスに行くので、そのときはADDressを利用させていただいています。

アートやデザインを学ぶことから、いずれは「アーティスト・イン・レジデンス」(アーティストを一定期間招へいして、滞在中の活動を支援すること)をやってみたいと思っています。面白い活動をしているADDress会員も多いので、会員とアーティスト双方にとって一味違った交流ができるのではないかと楽しみにしています。

「シェア」というコンセプトで交流やコミュニケーションを生み出す。

交流を楽しみたい人が楽しめるような、そんな静岡用宗B邸にしていきたいですね。

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佐々木さんにお仕事の話を伺うと合理的で業務整理が得意、短い時間で生産性高く働く、まさに「デキる人」の姿が浮かび上がります。

一方「一緒に遊んでくれる人に来てほしいんです」と無邪気に話す佐々木さんは、ビジネスゲーム体験会を主催したり、ワークショップで場を盛り上げるなど、「遊びながら習得する」達人。

仕事が詰まっていて余白を持ちたい。

そんな方は佐々木さんを訪ねてみると、会話からヒントが得られるかもしれません。

この記事を書いた人

高石典子

2020年8月よりADDress会員。月の半分はADDressの家を巡り、半分は自宅で過ごす。中学・大学生の2人の子の母。フルリモートで仕事をしており、母親業もリモート化できるのではと実験中。仕事はキャリアカウンセラー&ライター。喫茶店での読書と銭湯後の一杯が至福のひととき。得意技は「ポジティブ変換」。