外から来たからこそ気付く街の魅力【ADDress家守インタビュー】蒲原A邸 大澤さん

ADDressの特徴は均質化されていない滞在体験。

観光だけではなく、家守やその土地にいる方々、同じようにさすらう会員同士の偶然の出会いから始まる交流の楽しさ。

家々の個性や偶然性を楽しむことこそが、このADDressのサービスを満喫するコツです。

家の個性を形にする、家守の存在。

今回ご紹介するのは静岡蒲原A邸の家守、大澤さんです。

築170年を超える登録有形文化財の商家跡「志田邸」の敷地内にあるゲストハウス、「燕之宿(ツバメノヤド)」で暮らせる静岡蒲原A邸。

※静岡蒲原A邸は2024年2月でADDressと連携解消して、大澤さんは家守を退任しています。

醤油醸造蔵を改造したコワーキングスペースもあり、ちょっとしたタイムスリップ気分を味わえます。

ゲストハウスを営む大澤さんは、どのようにADDressに出会ったのでしょうか。

静岡蒲原A邸から徒歩2分の大澤さんの自宅兼奥さんのお店、「駄菓子ツバメ」にて、お話を伺いました。

もともとゲストハウスをやろうとは思っていなかった

2020年2月にゲストハウスの「燕之宿(ツバメノヤド)」をオープンしました。

私は長崎出身の転勤族で、静岡にはサラリーマン時代に6年ほどいましたが、蒲原は散歩に来る程度。

ただそのときから「蒲原の街は小さいけど穏やかでいい雰囲気だな」と思っていました。

家族のことも考えて定住を考え始めたことや、リノベーションに興味があったので静岡のリフォーム会社に転職し、奥さんがやりたい「駄菓子屋」をこの蒲原で開こうと移住してきました。駄菓子屋を開くなら蒲原がいいなと直感的に思ったんです。

もともとゲストハウスをやろうと思っていたわけではなく、「地域にあるもので事業をしたい」と考えていました。

きっかけは2つあります。

一つは、移住して近所に挨拶に回ったときに「こんな何もないところに」という言葉をかけられたこと。

私はこの街が気に入って移り住んだのに、地元の人が地域の魅力に気づいていないように感じました。もっと自分たちが感じた良いところを打ち出していきたい、と思ったのです。

もう一つは、移住して1年で地域の古民家が10軒解体されたことです。

この東海道沿いには宿場町らしい素敵な町屋と呼ばれる古民家がたくさんあるのに、どんどん風景が変わってしまい、もったいないと思いました。

外から来た人間だからこそ、その土地の魅力に気づく、ということはあると思います。

それからは蒲原にあるもので事業を起こしたくて、アイデアを考えてはノートに書き溜めていきました。

一方で、その当時はコロナ前で富士山周辺に来る外国の方も多くいました。

富士山周辺を歩く外国人観光客を見つけたら英語で話しかけて「蒲原に来てみて!」と誘ってはまち案内をしたり、駄菓子屋に連れてきたりしていました。

その中で「近くでバックパッカーが泊まれる手頃な宿があるといい」という話を聞き、

本格的に宿の運営を考えるようになりました。

ゲストハウスはアイデアノートの中の妄想の一つで、もともとは、自分が感じた蒲原の良さをもっと多くの人に知ってもらいたい、という思いが根底にありました

偶然ゲストハウスを訪れたADDressの会員に会い、「多拠点滞在」にリアリティを感じた

ADDressのサービスは知っていたのですが、最初は「首都圏だけで回っているのではないか」「全国をホッピングする人なんて実際いるんだろうか」と半信半疑でした。

ところが2020年の夏に、ADDressの会員が清里から南伊豆に移動する途中で燕之宿に泊まってくれまして。

その夜一緒に飲みながら話を聞きました。実際に全国をホッピングしている会員を目の前にして、一気にリアリティを感じた瞬間でした。

「多拠点滞在サービス」というサービスの内容も、地域とのつながりを作り関係人口を増やすというコンセプトや、家守という役割が地域とのパイプにもなるという点も自分のやりたいことに合っていると感じました。

その方が7月くらいにADDressの社員の方と繋いでくれて。話はトントン拍子に進み、翌月にはADDress提携が実現しました。

ADDressを始めてみて、おもしろい人たちが訪れてくれるようになりました。

いい意味で常識にとらわれておらず、新しい生き方や暮らしを取り入れている人たち。

考え方も柔軟で、話をするとおもしろがっていろいろな形で関わってくれたり、応援してくれます。

実際にADDressを始めることになったのも、偶然のご縁から繋がったわけですしね。

滞在する人の時間を尊重し、清潔で居心地のよい空間を提供したい

(リノベーションされたダイニングキッチン。コワーキングスペースにもなる)

家守としてこだわっていることは、2点あります。

ひとつは、滞在する人の時間を尊重すること。

日中はお仕事をしている方が多いので、そのようなときは挨拶も短めにするようにします。

朝や夕方はご自身なりの有意義な時間を過ごされていたりするので、

尋ねられたときにご案内するようにしています。

もうひとつは、施設の清潔さです。

素泊まりでコンパクトな宿だからこそ、安くてそれなりではなく、

安くても綺麗で快適な居室になるように手入れをしています。実際、私は掃除が好きですしね。

(個室は畳の二段ベッド。デスクやチェアも置かれておりリモートワークも可)

見どころは歴史ある建物、冬の富士山、桜えびのピンクの絨毯

会員の間でリピートする人もいるくらい人気なのは「蒲原酵素イオンハウス」という酵素風呂です。

ジョギングで富士川の河口に行くのもおすすめです。

蒲原A邸からは片道15分程度。

さくらえび漁の時期は、さくらえびを干すピンクの絨毯が見られます。

また、お酒が好きな方なら蒲原A邸から徒歩2分程度のところに「府中屋」という酒屋さんがあります。おもてから見ると普通の酒屋さんですが、奥が居酒屋になっていてお店で飲むこともできます。

旧東海道沿いの宿場町だった時代の建物も魅力的です。

重要文化財になっているものも複数件あります。ぜひ見学してみてください。

富士山を見るなら冬がおすすめです。

空気が澄んでいて、くっきり見えますよ。

静岡は晴天率が高く、冬でも最高気温10度を超えるほど温暖なので過ごしやすいです。

トイタマーケットという露天市も年に4回ほど企画して開催しています。

ADDressの会員がお店を出してくれたこともありました。

子供向けの英語のワークショップで、それこそ我が家の息子も入り浸るくらい、大人気でした。

蒲原の良さを伝えていきたい

今後は、蒲原エリアでもホッピングできるように複数の家を出せるといいなと思っています。小田原や鶴巻温泉のように。

会員の交流が促進されて、コミュニティのようになったら楽しそうですね。

地域で活動していると、壁にぶつかることもたまにあります。

そんなとき、ADDressの会員がアイデアをくれたり、共感してくれたり、励ましてくれたりしてありがたく感じます

全然違う相手に話を聞いてもらうことで、違う角度からのアドバイスをもらえたり、

煮詰まっていた考えを打破することもできるのです。

この地域にはいいものがたくさんあって、地域の人も文化財を守って大切にしているのに

発信が足りなくて伝わっていないことがまだまだあります。

ADDressの会員はSNSに長けている人も多い。

アドバイスをもらいながら、もっと地域の魅力を伝えていきたいですね。

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話を聞くほどに蒲原への愛着がにじみだす大澤さん。

「検索されない街ですが・・・」とおっしゃるものの、

その「検索されない街」の魅力が人から人へと繋がり広がることが、

多拠点滞在サービスのADDressの面白さです。

人や体験を介することで生まれる愛着。

ADDressの家を出るときは「また来ますね」という挨拶を交わし、

いつもの場所が、いくつもある状態になっていきます。

この記事を書いた人

高石典子

2020年8月よりADDress会員。月の半分はADDressの家を巡り、半分は自宅で過ごす。中学・大学生の2人の子の母。フルリモートで仕事をしており、母親業もリモート化できるのではと実験中。仕事はキャリアカウンセラー&ライター。喫茶店での読書と銭湯後の一杯が至福のひととき。得意技は「ポジティブ変換」。