家守を始めて地域とのつながりが深まった【ADDress家守インタビュー】用宗A邸 八木さん

ADDressの特徴は均質化されていない滞在体験。

観光だけではなく、家守やその土地にいる方々、同じようにさすらう会員同士の偶然の出会いから始まる交流の楽しさ。

家々の個性や偶然性を楽しむことこそが、このADDressのサービスを満喫するコツです。

家の個性を形にする、家守の存在。

今回ご紹介するのは静岡県にある用宗(もちむね)A邸の家守、八木さんです。

息子さんのシェアハウスのお手伝いでDIYをしているうちに楽しくなり、自分でもやり始めたという八木さん。

家を訪れると壁紙や照明、板を張った広いデスクなど、DIYの工夫が随所に見られます。

エベレストを目指す夢想家、ADDress名物会員の西川さんも在籍する用宗。

壁には何枚かの色紙にこの家を訪れた人たちの「夢」が書かれて掛けられており、その一部は既に実現しているとか。夢が現実になる家・・・?

(写真奥に映るのは板を渡してDIYで作られた机。彩られた襖。全て八木さんの手がけたもの)

定年後にDIYのおもしろさに目覚め、生まれ変わった家で迎え入れる

息子が運営しているシェアハウスの手伝いをしたことがきっかけで、DIYのおもしろさに目覚めました。

古い家屋をリノベーションして綺麗にしていく過程がおもしろくて。

それからは自分でも手掛けたいと思い、静岡に戻って用宗でシェアハウス用の家を手に入れました。

当時は用宗は空き家が増えてきており、「なぜその場所で買うの?」と言われるほど注目されていない土地でしたが、のんびり2年かけてリフォームしているうちに用宗が開発され、温泉やお洒落な店もできてきました。DIYが完成に近づくと同時に周辺地域も活気が出てきて。ラッキーでした。

ADDressを知ったきっかけはテレビでした。

おもしろそうなサービスだなと思い、2020年10月くらいに物件を見に来てもらい、家守という役割についても聞きました。

掃除、洗濯、利用者への案内などが業務としてあると聞き、

宿泊業や接客業の経験もなく不安でしたが、内容を聞いたら自分にもできそうかなと感じました。定年後は社会と断絶してしまうので、話せる相手がいるといいなという気持ちでお受けしました。

しかし私はもともと用宗出身ではないので、実はこの土地にはあまり詳しくないんです。

どうしたらよいかと考え、アンケートを設置して会員に情報を聞くことにしました。

滞在を快適にしていくためのヒントをもらい、周辺地域のおすすめポイントも聞いています。

リクエストにはなるべく応えていきたいと思いますし、会員が励ましの言葉を書いてくれるので読むのが楽しみですね。

まちの外から来た人が地元の魅力を再発見

家守を始めてから、おもしろいことばかりです。

何をやっても楽しい。DIYをはじめ、掃除をしても、会員と話しても、ゴミ出しさえ楽しい。

サラリーマンを定年退職して地域に貢献しようと思っても、今までの付き合いがないとなかなか難しいんですよね。

しかし家守をやっていると、地域とのつながりが得られて貢献できている実感があります

例えば、訪れたADDress会員が地元の友人を知っているということで紹介してもらったら、偶然「用宗を楽しくする会」の会長と知り合いだということがわかり、すぐにつないでもらって活動に参加するようになりました。

地元の良さは、地元の人は見慣れていて気付かないことも多いんです

あるとき、何でもない路地を「エモーショナルだ」とADDress会員が動画で撮影していて。

地元の魅力を再発見してもらいました。

ADDressサービスは「滞在型」なので観光とは異なります。

観光だとスポットが決まっており、そこに集中して人が訪れますが、

滞在型の場合は地元にしかないお店に行ったり、何度も訪れて顔なじみになったり、まさに「関係人口」という形で地元のいろいろなつながりを作ってくれるのです。

(右側はエベレストを目指す夢想家のADDress会員、西川さん)

夢想家が滞在する家で、夢を語る

ここ用宗邸にはADDress会員でエベレストを目指す夢想家、西川さんが滞在しています。

身近に本格的な登山家、しかも世界最高峰を目指そうとする人などなかなかいないですよね。

地元ではADDressとともに「エベレストを目指す人」で知られるようになっています。

居酒屋に行ったとき、「あのエベレストを目指している人ですか?!」「その家の家守さんですね!」と声をかけられたりました。

私の知人に中学校の校長先生がいるので西川さんをご紹介したところ「ぜひ子どもたちに話してほしい」とのことで、中学生に向けた西川さんの講演が実現しました。

ADDressでも「みんなのエベレスト部」という部活を立ち上げ、夢を応援するクラウドファンディングの盛り上げ役をしています。その活動は色々広がっています。

今は応援ソングを作っています。ADDressで声をかけたら、いろいろな人が集まってくれて。曲を作ってくれる人、歌ってくれる人、ドラムにギターができる人。ロゴを作れる人やカメラマンまで。

ADDress会員にはいろいろなプロフェッショナルがいる。それぞれが得意なことを発揮して一つのプロジェクトが進んでいく。

この活動には興奮しますね。

(用宗A邸に掲げられた「それぞれの夢」)

用宗A邸に来たら夢を語って色紙に書いてみてください。

居酒屋のオープンに、エッセイの連載。

掲げた色紙でもう実現しているものもあります。

用宗の見どころ。みなと温泉に富士山、海賊船に生しらす

周辺のおすすめとしては、

用宗みなと温泉。用宗A邸から徒歩で15分程度。港の近くにあり、温泉から富士山を見ることもできます。

12月~4月までは用宗漁港の避難タワーを竹灯籠のイルミネーションで飾ります。

その活動も「用宗を楽しくする会」がやっており、去年作った竹灯籠は小学校の校庭沿いに設置して灯しています。

お子さんがいらっしゃる方なら広野海岸公園。海が見える芝生が気持ちよく、海賊船があり、子どもたちの遊び場になっています。

用宗A邸からは自転車で15分程度です。用宗A邸には自転車が複数台あるので自由に使っていただけます。

飲食店なら居酒屋「じゅん」がおすすめです。〆にお寿司をぜひ食べてみてください。

お腹いっぱいな気がしても、不思議と入ってしまいます。

用宗はしらす漁がさかんですが、特に秋の生しらすはおすすめです。

お越しになった際は、ぜひ「生しらす丼」を味わってみてください。

実家に戻ったときにいる家族のような、気軽に声をかけてもらえる存在でいたい

どんな家守でありたいか、と考えたときに、

訪れた人にとって、「実家に戻ったときに家にいる人」のような存在になりたいと思っています。

ある人にとってはおじさんのようであり、お兄さんであったり、時にはお父さんであったり。

誰かとご飯一緒に食べたいな、と思ったときに気軽に声をかけてもらえるような存在でいたいな、と思っています。

だから会員の皆さんには、実家に戻ったときのように自由に過ごしてほしいですね。

私自身の今後としては、「用宗の地域通貨を作りたい」という夢があります

小田原なら「おだちん」、飛騨には「さるぼぼコイン」があり、今はお手本を研究しているところです。

用宗をもっと元気にするために、お金というインフラから活性化させていきたい。

通貨の名称も、構想しています。期待していてください。

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キラキラとした目で楽しそうに語ってくれる八木さん。

用宗A邸は手作りのリフォームの楽しさが伝わるとともに、実は細かいPOPにも八木さんのユーモアのある人柄が表れています。

私が滞在したお部屋は「用宗スイート」と呼ばれているとか。

白い壁に大きな窓。部屋には大きな植物があり、まさに南国リゾートのお部屋のような雰囲気です。

2度目の来訪時、前日に届いたメールの件名には「お帰りなさい」と書かれていました。

八木さんの待つ実家に戻るような、何度も訪れたくなる家です。

この記事を書いた人

高石典子

2020年8月よりADDress会員。月の半分はADDressの家を巡り、半分は自宅で過ごす。中学・大学生の2人の子の母。フルリモートで仕事をしており、母親業もリモート化できるのではと実験中。仕事はキャリアカウンセラー&ライター。喫茶店での読書と銭湯後の一杯が至福のひととき。得意技は「ポジティブ変換」。