近所付き合いの延長線上に、まちづくりがある【ADDress家守インタビュー】池上A邸 家守グループ

(左:副家守の天野さん 右:家守の谷口さん)

ADDressの特徴は均質化されていない滞在体験。

観光だけではなく、家守やその土地にいる方々、同じようにさすらう会員同士の偶然の出会いから始まる交流の楽しさ。

家々の個性や偶然性を楽しむことこそが、このADDressのサービスを満喫するコツです。

家の個性を形にする、家守の存在。

今回は池上A邸の家守グループ、谷口さん・黒田さん・天野さんをご紹介します。

池上A邸はの家は「池上ちおん」という名前があり、その由来は池上にゆかりが深い日蓮宗の言葉「知恩報恩」からきているそう。

恩を知って、恩に報いようとする。

地域や人と積極的に関わり、ご縁を大切にする価値観がお話の中から滲みでてきます。

※池上A邸は現在ADDressと連携解消して、今回取材したみなさんは家守を退任しています。

交流に疲れた人にもおすすめ。静かで落ち着ける環境

(家守の黒田さん 普段は関西にいて、東京に来るときに手伝っています)

黒田:5年前に名古屋から東京に出てきて、池上に住み始めました。

池上は駅構えもこじんまりしていて昔ながらのお店が多く、「東京にもこんな場所があるの?」と思っていました。

池上は東京にいながら地方感を感じられる街です。

かつてロンドンでの短期留学時に100人ほどのシェアハウスに住んでいたことや、姉が住んでいたシェアハウスに遊びに行った経験から運営に興味を持っていました。池上は会社の寮があって3年ほど生活していましたが、寮を出てもこの街から離れようとは思えませんでした。

なので、この土地でシェアハウスをやりたいと思い、物件を探していたんです。

でもコロナが重なってどうしようかと考えているときに、ADDressのサービスを知り、提携を申し込みました。

(フォトウォークのイベントにて。池上本門寺の近くでパチリ)

谷口:私は3年前に池上に来たのですが、その当時は友人からも「池上ってどこ?」と言われるほど、知られていない街でした。

自分が気に入った池上を知ってもらいたくて、1年目は友人におすすめのお店などを紹介していました。2年目にはSANDO BY WEMON PROJECTS(愛称SANDO)店主の天野さんと会い、その頃から写真を撮りながら歩いて池上を知ってもらう「フォトウォーク」というイベントを始めました。古民家カフェの「蓮月」や「SAND」、本門寺にも行きます。(各施設は後半で紹介しています)

※SANDOは2022年1月31日をもって閉店となりました。

ADDressの家守は黒田さんと一緒に始めたのですが、彼女が転勤になり常駐が難しくなったことや、私自身も日中仕事でなかなか家で出迎えられないので、

助っ人が欲しくて、天野さんに声をかけました。

(フォトウォークでは池上の街を歩き、お店の人と話をしたり撮影をします)

天野:家守に誘われた当時はSANDOというカフェの店長をしていました。谷口くんと知り合った頃は店にずっと出ていて。帰りが遅くなるのでこの池上ちおんに泊まることもありました。谷口くんと一緒に企画してフォトウォークも始めました。いつのまにか家の改装や準備も手伝うようになりました。

谷口:ADDressの準備のためにリビングにフローリングのシートを敷いたり、壁にもしっくいをに塗ったり、照明を設置したり。自分たちで少しずつ住みやすくしていきました。

天野さんにはハンガーラックを組み立ててもらったし、黒田さんには部屋に貼るPOPを作ってもらいました。

私はメインの家守として会員の予約対応やリネンのクリーニングをしています。

この家は一軒家ですがADDressの部屋が一つということもあり、交流は少なめですが落ち着いて仕事ができる環境です。

家守の私は住み込みですが、日中不在がちなので、池上A邸は一軒家に一人で過ごすような感覚になると思います。

少し交流に疲れた、というときにはちょうどよいかもしれません。

私自身は会員と会える機会が少ないので事前のメールに池上A邸の使い方や付近の銭湯の情報なども盛り込んでいます。

「あの銭湯行ってきたよ」と聞かせてもらえることもあり、嬉しいですね。

リビングにあるレコードの一部は天野さんが提供してくれたものです。

天野さんはギタリストでフェンダーミュージック株式会社でアーティストの窓口をしていたこともあり、池上家守グループの音楽担当です。

レコードは懐かしい曲も多く、訪れる方が40~50代の方だったりすると、昔を思い出して聞いていてくれたりします。

どんなラインナップがあるか、レコードのジャケットをぜひ見てみてほしいですね。

SANDOを入り口に、池上を知ってもらえる。

(当時SANDOの店主をしていた副家守の天野さん 写真:山中康司)

天野:SANDOは現代アートと建築家のチームが作った「池上エリアリノベーションプロジェクト」の中核となる場所です。

カフェでコーヒーを提供していますが、それだけではなく、地域のコミュニティスペースやハブのような存在になっています。

SANDOを作った人達は、「まちづくりをしよう」「この街を何とかしよう」といった使命感のようなものは持っていませんでした

その肩ひじ張ってないところがよかったのかな。

SANDOは外から見ると若者が入りそうな洗練されたカフェですが、地元の人も自然に入れるような場所です。

例えば90代のおばあちゃんも自然に入ってきてくれます。

SANDOにはコミュニケーションの空間というの立ち位置があるので、スタッフもそれを大切にしています。例えばスタッフ自ら地元の店を開拓して「このお店のこれが美味しい」という情報を楽しみながら集めて、来店したお客さんにもお伝えしたりします。

池上は個人経営の店も多くて一見入りづらいところもあるのですが、「SANDOスタッフからのおすすめ情報」という受け皿があると、入りやすい状態になるんですね。

SANDOを入り口に入ってきた人たちが池上のことを知ってくれる。

結果的に、地元と新たに来た人を繋げる場になっているかもしれません。

谷口:天野さんは地元のお店を開拓してマスターと仲良くなったり、先陣切ってやっていますよね。

天野まちづくりといっても、ただただ近所づきあいしているだけで。

外から来た友達が僕の知らないところで常連になっていたりすることもあります。

僕は福祉の仕事をしていたこともあるのですが、支援する対象者に決まった支援内容を提供する姿勢に疑問を感じていました。

対象者だけを支援するのではなく、周囲も含めて受け入れられるような環境を作ることが必要だと思っていて。

そこには「顔の見える関係」「会ったら挨拶を自然にできる間柄」といった関係性が大事なのではと思っているのです。

大きな単位では難しくても、地域の小さなつながりからなら、変えられるのではと思っています。

谷口:私もなるべく行ったことのないお店に行くようにしています。

新規開拓が、結果的に会員におすすめできる店を増やすことにもつながっていますね。

池上の魅力は「余白のある街」

谷口:池上は池上本門寺もあり由緒ある寺町で、昔からここに住んでいる人も多い土地です。

由緒ある寺町、というと排他的なのではという印象もありますが、池上は全くそのようなことはなく、地元の商店街の会長でも「新陳代謝をしないと街が死ぬから若い人にどんどん入ってきて欲しい」というほど、新しい人を受け入れてくれる街です。

例えば、コロナ前は池上本門寺でスローライブというイベントが開かれていました。

お寺でライブなんてなかなか難しいのでは、と思いますが、お寺の協力を得て実現しています。出演する側も、普段バンドの人もアコースティックに変えたりして。

お互いに協力しながら街に合うように作り上げています。

池上本門寺の代表的な祭り、「お会式」も街が一体になるようなイベントです。

火消しの纏(まとい)を回してパフォーマンスをするのが特徴のお祭りですが、地元の人たちは子供のころからそれを見て「かっこいい」と感じているようです。

だから大人になると、仕事があってもその時期は地元に戻って練習や準備をしています。

私たちが池上を深く知ったのも町内会に入らせてもらって、そのお祭りに参加してからですね。新参者が入っても歓迎してくれます。

黒田:私にとって池上の魅力は「完成しきっていない余白のある街」という点だと思います。

できあがっていないからこそ、一人一人が入り込める余地がある。

そこに惹かれます。

谷口:非常事態宣言も解除されたので、今後はフォトウォークの活動も再開していきたいですね。会員も参加できるようにしていきたいと思っています。

飲食店も営業時間が平常に戻ってきていますし、今まで紹介できなかった店も紹介できる状態になってきました。

池上の良さは新しく来た人も自然に迎え入れてくれるし、深く入り込んでも受け入れる土壌があるところです。

*****

「おすすめのお店はどこですか?」と聞いたら

天野さんが「全部上げておかないと・・」と呟きました。

どのお店にもそれぞれの愛着がある模様。

後編、池上家守グループのおすすめ池上スポットについて、聞いていきます。

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この記事を書いた人

高石典子

2020年8月よりADDress会員。月の半分はADDressの家を巡り、半分は自宅で過ごす。中学・大学生の2人の子の母。フルリモートで仕事をしており、母親業もリモート化できるのではと実験中。仕事はキャリアカウンセラー&ライター。喫茶店での読書と銭湯後の一杯が至福のひととき。得意技は「ポジティブ変換」。