自由を手に入れても、幸せになれるとは限らない
「FIRE」という言葉を耳にする機会が増えました。ADDressの会員さんでもFIREされている方によく会います。若いうちから資産形成を進め、十分な金融資産を築き、仕事に縛られず自由に生きる。そんなライフスタイルに憧れる人も多いと思います。
先日、とても印象に残る記事を読みました。
45歳で約1億6,000万円の資産を築き、会社を退職。年間の運用益だけで生活費をまかなえる状況となり、念願だったFIREを実現した男性の話です。
最初の数か月は、時間にもお金にも余裕のある理想的な毎日でした。しかし、その暮らしは長くは続きませんでした。
気づけば、一日誰とも話さない日が続く。会社を辞めたことで失ったのは仕事だけではなく、人との接点だったのです。
そんな彼は、偶然訪れた地域コミュニティの読書会で「また来てください」と声を掛けられます。その一言をきっかけに地域とのつながりが生まれ、やがて家賃25万円の都心のタワーマンションを離れ、そのコミュニティの近くへ引っ越すことを決めました。
決して資産が減ったからではありません。
彼が手に入れたかったのは、これ以上のお金ではなく、「居場所」だったのです。
(参考記事: https://gentosha-go.com/articles/-/80379 )
もちろん、お金はとても大切です。生活の不安を減らし、人生の選択肢を広げてくれます。私自身も、資産形成は人生を豊かにする大切な手段だと思っています。
でも、ある程度の安心を手に入れた先では、お金だけでは満たせないものがあります。むしろFIREなんてする必要もなく、適度な仕事がある方が幸せです。
何よりも大切なのは、「誰と時間を過ごすか」「どこに帰るか」「自分を必要としてくれる人がいるか」という、人とのつながりです。
私自身、ADDressを始めて全国を旅するように暮らす中で、何百という地域を訪れ、多くの人と出会ってきました。その経験を通して感じるのは、豊かさとは通帳の残高だけでは測れないということです。
「また来てね」と言ってくれる場所が、人生を豊かにする
ADDressを利用していると、不思議なことが起こります。
初めて訪れた地域なのに、数回通うだけで「おかえり」と迎えてくれる人ができる。家守さんと近況を話し、近所のお店で「久しぶりですね」と声を掛けられ、他の会員さんと一緒にご飯を食べる。札幌に移住してからも、こちらから行くだけでなく、毎月誰かが札幌行くのでご飯行こうとか、声掛けもしてくれます。
おかえりと言ってくれるような場所は、旅先ではなく「もう一つの暮らし」へと変わっていきます。
豪華な家や高級マンションに住むことも素敵です。でも、本当に心を豊かにしてくれるのは、自分の名前を覚えてくれている人がいることなのではないでしょうか。
最近は、地震や豪雨など大きな災害も増えています。
そんな時、本当に心強いのは、行政の支援だけではありません。
「困ったらうちに来なよ。」
「部屋が空いているから泊まっていけばいい。」
「食事だけでも一緒にどう?」
そんな一言を掛け合える人とのつながりこそが、大きな安心になります。
私はこれからの時代、「資産の分散」と同じくらい、「人とのつながりの分散」が大切になると思っています。
一つの会社、一つの地域、一つのコミュニティだけに依存するのではなく、日本各地に知り合いがいて、帰れる場所がある。
それは災害への備えという意味だけではありません。人生そのもののレジリエンスを高めてくれる、大きな財産になるはずです。
ADDressには、「旅をするため」だけではなく、「暮らしを増やすため」に利用してくださっている方がたくさんいます。
家が増えるのではなく、「居場所」が増えていく。
それこそが、多拠点生活の一番の価値なのだと思います。
増やしたいのは、お金ではなく「帰れる場所」
お金を増やす努力は、もちろん大切です。
でも、その目的は幸せに暮らすためです。
もし自由な時間が増えた結果、人と話す機会が減り、孤独になってしまうのであれば、それは少しもったいない。
だから私は、お金を増やすことと同じくらい、人とのつながりを増やすことを大切にしたいと思っています。
全国に、「ただいま」と言える場所がある。
「おかえり」と迎えてくれる人がいる。
「また来てね」と笑顔で送り出してくれる地域がある。
そんな場所が一つ増えるたびに、その人の人生は少しずつ豊かになっていく。そして、そのつながりは、日々の暮らしだけでなく、災害や困ったときにも支え合える力になります。
お金は、自由を買うことはできます。でも、「おかえり」と迎えてくれる人は、お金では買えません。
これからの時代、本当に豊かな人とは、一番資産が多い人ではなく、一番「帰れる場所」が多い人なのかもしれません。
ADDressが増やしたいのは、家ではありません。
「ただいま」と言える場所と、「おかえり」と迎えてくれる人です。
全国にそんな場所が一つ、また一つと増えていけば、人生はもっと豊かになり、日本はもっと助け合える社会になる。
私は、そんな未来をADDressでつくっていきたいと思っています。